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人事労務管理コラム ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)

女性活躍推進法をわかりやすく解説。
今取り組むべき理由や具体策を紹介

女性活躍推進法をわかりやすく解説。今取り組むべき理由や具体策を紹介

人事総合ソリューション リシテア」より女性活躍推進法に関するお役立ち情報のご紹介です。
2025年度までの時限立法として、2016年から施行されている「女性活躍推進法」。女性の個性や能力が十分に発揮できる社会の実現を目指し、女性活躍に関する行動計画の策定や情報公表を企業に義務づけるものです。

女性活躍推進法は内容が複雑なうえに改正もあり、内容をしっかりと理解している方は決して多くはないのが現状です。今後、少子高齢化による労働力不足を背景として、女性の活躍に対する社会的な期待はさらに高まると見込まれるだけに、その内容を正しく理解し、女性活躍に向けた取り組みを進めていくことが重要です。

この記事では、女性活躍推進法の概要や目的をわかりやすく解説するとともに、今取り組むべき理由や女性の活躍を促すための具体策についてご紹介します。

女性活躍推進法とは?

女性活躍推進法とは、働く意思を持つすべての女性がその個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目的に、事業主が担わなければならない女性の活躍推進に関する責務を定めた法律です。正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」で、10年間の時限立法(一定の有効期間を付した法律)として2015年8月に国会で成立し、2016年4月に施行されました。

女性活躍推進法は以下の3項目を基本原則としています。

  • 女性に対する採用や昇進の機会が積極的に提供されること
    (出産や育児といったライフイベントに関係なく、女性が平等に仕事で評価される環境をめざす)
  • 職業生活と家庭生活との両立に必要な環境を整えること
    (出産や育児など、男性よりも両立が難しいライフワークバランスの整備をおこなう)
  • 職業生活と家庭生活との両立に関し、女性の意思が尊重されること
    (ライフイベントを機に、仕事を辞める・続けるという判断を女性自身に委ねる環境をめざす)

女性活躍推進法にもとづき、女性の活躍推進に関する状況などが一定基準を満たしている優良企業は、都道府県労働局への申請により「えるぼし」という厚生労働大臣の認定が受けられます。えるぼしは評価基準を満たす項目数に応じて3つの段階があり、特に優良な企業は「プラチナえるぼし」として認定されます。

女性活躍推進法の改正ポイント

女性活躍推進法は改正も多く、2019年5月に改正女性活躍推進法が成立しました。この改正の主なポイントとして以下の3つが挙げられます。

1. 対象企業の拡大

女性活躍に関する「行動計画の策定・届出」と「情報公表」が義務づけられる対象企業が拡大し、2022年4月1日からは常時雇用する従業員数が101人以上300人以下の企業も対象となりました。

2. 情報公表の強化

自社の女性活躍に関する情報公表について、常時雇用する従業員数が301人以上の企業は以下の各区分からそれぞれ1項目以上公表することが義務づけられていました。

  1. ①職業生活に関する機会の提供に関する実績
  2. ②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

さらに、2022年7月の改正において、情報公表項目に「男女の賃金の差異」が新たに追加され、企業はこれを含む合計3項目の情報公表が必須となりました。

また、常時雇用する従業員数が101人以上の企業においても、2022年4月1日からは①②のすべての項目から1項目以上を公表する義務があります。

3. プラチナえるぼし認定制度の創設

2020年6月1日より、女性活躍の推進状況が優良な企業に認定される「えるぼし」よりもさらに水準の高い「プラチナえるぼし」の認定が始まりました。「えるぼし」「プラチナえるぼし」の認定状況については厚生労働省のWebサイトで確認できます。

女性活躍推進法が制定された目的

現在の職場環境の問題として、妊娠・出産をきっかけに離職せざるを得なかったり、昇進面において不利益な扱いを受けたりするなど、女性が社会で能力を生かしきれていないという点が挙げられます。

内閣府 男女共同参画局が公表した男女共同参画白書(令和3年版)によると、民間企業の女性管理職比率は13.3%にとどまっており、女性の管理職登用が進んでいない状況が見てとれます。また、育児が一段落した後に再就職を希望する女性は多いものの、仕事と育児を両立するために勤務地や勤務時間が限定的になったり、長期離職後の仕事復帰に不安を感じていたりと、なかなか再就職に踏み出せない現状もあります。

このような問題点を受け、働きたい女性が継続的に活躍できる労働環境を整備し、女性の社会参加を促す目的で女性活躍推進法が制定されました。女性の活躍を推進するためには、女性が仕事と家庭を両立できる環境、そして女性が持つ能力を十分に発揮できる環境の両方を整える必要があります。

今、女性活躍推進に取り組むべき理由とは?

女性活躍推進法が制定された目的

近年、急激な少子高齢化の進行によって将来的な労働力不足が懸念されていることを背景に、職場における女性の活躍への期待はますます高まっています。

しかし、現状では日本企業の女性管理職の割合は13.3%と、アメリカの41.1%、スウェーデンの40.2%、イギリスの36.8%など諸外国と比較しても相対的に低く、日本における女性の管理職登用は世界的に見ても進んでいるとはいえません。内閣府 男女共同参画局「男女共同参画白書(令和3年版)より)。

また、各国の男女格差を図るジェンダーギャップ指数2022において、日本は146カ国中116位と、主要7カ国の中でも最低レベルとなっています。

女性の場合、結婚や妊娠・出産、子育てなどのライフイベントが、継続的に企業で働くうえで障害となることも少なくありません。政府も2003年に「各分野で指導的立場にある女性の割合を2020年までに30%程度に引き上げる」という目標を掲げたものの、2020年にいまだ達成できていないのが実情です(目標は「2020年代の可能な限り早期」という方針に修正)。

このため、女性の活躍は企業にとって重要な課題となっており、その基盤をなす女性活躍推進法は高い重要性を持っています。子育てとの両立支援や女性管理職の登用など、女性の能力が最大限に生かされる社会の実現に向けて企業が積極的に取り組みを推進することで、女性の社会参加や職場で活躍できる女性が増え、結果的に労働力不足の解消につながると考えられます。

女性活躍推進法を遵守するために企業がとるべき3つの具体策とは?

企業が女性活躍推進法を遵守するための具体策として以下の3つが義務づけられています。

(1)状況把握・課題分析

まずは自社における女性活躍の状況を調べ、課題を分析します。

厚生労働省は以下の4点について、企業が把握すべき必要最低限の項目に設定しています。

  1. ① 女性の採用比率
  2. ② 勤続年数の男女比
  3. ③ 月ごとの労働時間の状況
  4. ④ 女性管理職の比率

これらは必ず把握すべき「基礎項目」であり、課題分析においてはまず上記4点を調べる必要があります。その結果として、企業の課題が明らかになった事項については、必要に応じて選択する「選択項目」によってさらに分析を深めていきます。

(2)行動計画の策定・届出・公表

(1)の調査結果を踏まえ、事業主は「一般事業主行動計画」を策定し、社内で実際に女性活躍を推進する施策を実施していきます。

行動計画に規定すべき事項は以下の4点です。

  1. ① 計画期間
  2. ② 数値目標
  3. ③ 取り組み内容
  4. ④ 実施時期

また、策定した行動計画は都道府県労働局への届出と、社内外への公表が義務づけられています。社内周知の方法としては、事業所への掲示やメールでの送付、イントラネットへの掲載などが挙げられます。外部へ公表する方法には、自社のWebサイトに掲載するほか、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載などもあります。

(3)自社の女性の活躍に関する情報公表

女性活躍推進法では、自社の女性活躍に関する情報公表も義務づけています。
以下の2つの区分から自社の従業員数に応じて必要な項目数の情報を公表します。

自社の女性の活躍に関する情報公表

出典:「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000984248.pdf)

情報公表が必要な項目数は企業が常時雇用する従業員数によって異なります。

常時雇用の従業員数が301人以上 ①から「男女の賃金の差異」を含む2項目以上
②から1項目以上
常時雇用の従業員数が300人以下 ①と②の全項目から1項目以上

また、行動計画の外部への公表と同様に、自社の女性の活躍に関する情報公表においても、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」を利用できます。公表のサイクルについては概ね年1回以上更新することが推奨されており、その際は更新時点を明記したうえで、その時点における最新の数値を公表することが求められています。

女性活躍推進法の企業事例

女性活躍推進の取り組みの参考として、日立ソリューションズの事例をご紹介します。

株式会社日立ソリューションズ

日立ソリューションズでは、女性活躍推進法を通じた「意思決定の精度向上・意思決定層の多様性」を実現させるために以下の施策を実施しています。

  • 仕事と育児を両立する女性従業員の増加
    → 新卒採用における女性総合職比率を11年連続30%確保
  • 女性管理職比率のKPI設定
    → 男女ともに機会均等な登用をめざす

対外活動としては、「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」参加し、全国各地のさまざまな業種の男性リーダーとのネットワークを深めながら、ジェンダー平等と女性活躍の取り組みを加速しています。
また、女性活躍推進だけではなく、男性育休取得推進・LGBTQに関する取り組みなど、従業員の多様な個性・技術力を生かし、価値創出につなげることをめざした取り組みをしています。

参考:日立ソリューションズ「サステナビリティ 会社の成長と従業員の幸せ」

企業の持続的な成長のために、女性活躍推進は必要不可欠

女性活躍推進法は、女性が能力を生かしながら継続して働ける社会の実現をめざすために制定された法律です。その内容は、働きたい女性が自らの能力を発揮できる職場環境づくりを促すもので、企業に対する具体的施策として「状況把握と課題分析」「行動計画の策定・届出・公表」「自社の女性の活躍に関する情報公表」の3点を義務づけています。

少子高齢化による労働力不足が懸念されるなか、妊娠や出産、育児などのライフイベントのある女性が継続的に活躍できる職場環境を整備することは、持続的な成長をめざす企業にとって必要不可欠な取り組みです。

日立ソリューションズでは、企業の女性活躍推進を健康面から支援するサービスを提供し、女性従業員のエンゲージメントやパフォーマンスの向上、休職や離職の防止などにつなげています。女性活躍推進に向けた取り組みをお考えの場合は、お気軽に当社までお問い合わせください。

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