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人事労務管理コラム

労働基準法

労働基準監督署の査察と改善命令

普段の生活のなかではなかなか関わることがない労働基準監督署。この労働基準監督署とはどのようなことを行い、また企業に対してどのような効力を持っているのでしょうか。

労働基準監督署の査察と改善命令

労働基準監督署とは

労働基準遵守の監督
労働基準法では、労働日数・時間・賃金などが定められています。また、変形労働時間制・裁量労働制など、一定の条件を満たした場合に導入できる制度もあります。ただし、それらの法律・ルールが守られていない事例が少なからず存在します。そのような職場で働く人が、法律違反を労働基準監督署に申告すると、労働基準監督官の査察が入ります。そして、違法であることが判明した場合は、是正指導が行われます。

労働基準監督官の権限
労働基準監督官には、労働基準法をはじめとする8つの労働法規については、司法警察権を持っています。たとえば、違反した使用者を逮捕する権限もあります。つまり、労働法限定の警察官ともいえる存在です。なお、労働基準法違反の罰則として一番厳しいものに「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」というものがあります。たとえば、法に定められた休日・労働時間・休憩付与などのルールを守らないと、この刑罰の対象となります。

勤務時間切り捨てによる査察例

「サービス残業」などの不払い労働
労基署の査察が入った事例として、一番よく知られているのが「サービス残業」などと呼ばれる不払い労働です。特に多いのが、手書きの出勤簿を使用して勤務時間を管理しているケースです。出勤簿には実働時間に関わらず勤務予定時間をそのまま書いて提出するよう、使用者が労働者に指示をする、ということがあります。仮にその出勤簿に労働者が捺印(なついん)しても、別の形で出退勤時刻を記録していた場合、その差額は不払い労働であるとみなされ、労働基準監督署から、その差額を支払うよう命じられる事例が多数発生しています。この場合、労働者の記録は、メモ書き・家族へのメール・LINEの記録などでも認められます。なお、厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を策定しており、そこにおいて、客観的な方法で労働時間を把握する義務が使用者にあることを明言しています。

分単位の端数勤務時間を切り捨てる
労働基準監督署の査察の事例でよくあるもののひとつに、分単位の勤務時間切り捨てがあります。勤務時間が15分に満たなかった場合、その分を切り捨てて賃金計算をする会社は多数存在します。たとえば、8時50分に出勤して15時13分に退勤した場合、勤務時間を9時から15時の6時間として賃金計算をする、という例です。しかし、これは違法行為であり、労働基準監督署に申告されて査察が入った場合、この端数にあたる時間分の賃金の支払いを命じられます。法律上、勤務時間は1分たりとも切り捨ててはなりません。分単位の切り捨てが認められるのは、1か月の勤務時間を合計した際に30分未満の端数があった場合のみです。たとえば、分単位で集計した結果、月の総勤務時間数が150時間29分だと、150時間分の賃金支払いで問題はありません。なお、時間数が150時間31分だと、151時間分の賃金を支払う必要があります。

労働時間運用ルールの誤解釈による査察例

労働時間を規定している労働基準法32条の改定などにより、変形労働時間制をはじめ、みなし残業・裁量労働制などの、新たな労働時間の管理ルールが誕生しました。これらの制度を使うと、従来のルールより残業代を削減できることがあります。しかし、不適切な運用を行って労働基準監督署の査察が入ると、不払い賃金の支払いを命じられたり、管理ルールの変更を命じられたりすることがあります。

変形労働の不適切な運用
変形労働時間制とは、日や季節によって業務の多寡がある業態でよく使われる制度です。たとえば、週末が特に忙しい事業所で、金・土のシフト時間を10時間とし、ほかの日のシフト時間をそれに応じて短くすれば、金・土は8時間以上勤務しても残業代が発生しなくなります。ただし、この制度を誤って運用して労働基準監督署から訴えられ、是正指導を受けた事例がよくあります。よくあるのが、月間変形労働時間制を「1か月の所定労働時間を超えなければ残業が発生しない」と誤解するケースです。たとえば、月の所定労働時間を176時間と設定し、アルバイトに1日10時間ずつ17日働かせ、残業代を支払わない、などという会社がありました。労基署の是正が入り、会社は裁判で争いましたが、残業代の支払いとアルバイトに対する変形労働時間制の廃止が最終的に決定しています。

みなし残業・年俸制・名ばかり管理職
新たな労働時間管理方法として、みなし残業・年俸制などを採用している企業も増えています。これらの制度は、現代の労働環境・働き方に対応する形で誕生しました。ただ、少なからず企業が「これを採用すれば、残業代は支払わなくていい」と誤解しています。その結果、労働基準監督署の査察・是正勧告を受け、後から多額の残業代を支払う、という事例が増えています。同じものは、「管理職だから残業代は払わなくてもいい」という考え方にもあてはまります。単に「課長」「店長」などの肩書きをつければ管理職になる、というわけではありません。残業代が発生しない「管理職」は、一定以上の権限と報酬があることが前提となります。その実態を労働基準監督署に訴えられた結果、残業代を支払うことになった、という例も存在しています。

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