人事戦略
従業員のキャリア自律支援に取り組むメリットは?課題・施策例・手順を解説

「人事総合ソリューション リシテア」より人事関連のお役立ち情報のご紹介です。
近年は、従業員のキャリア自律のサポートに取り組む企業が増加しています。本記事では、キャリア自律が求められている背景やメリットを解説します。企業がキャリア自律支援に取り組む際の課題や施策例、手順などもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
キャリア自律とは
キャリア自律とは、個人が企業や組織に依存せず、自身のキャリアと向き合って主体的にキャリアを開発することです。キャリア自律度が高い人は、仕事に対する意識が前向きで、自分の成長や成果に対する自己評価も高くなる傾向があります。
キャリア自律の定義
キャリア自律は、自身のキャリアを見据え、仕事に対して主体的に何らかの意味や意義を与えながら働ける状態です。自分の強みや弱みを環境変化のなかで自覚しながら、自己責任のもとで継続的に自己啓発や成長を遂げていきます。
キャリア自律が求められる背景
企業がキャリア自律の支援に取り組むようになったのは、主に以下の3つの背景があります。
労働人口の減少
近年は労働力不足が問題視され、労働力人口が減少しつつあります。企業が成長を維持していくためには、従業員1人当たりの労働生産性を上げることが重要です。そこで、従業員が自ら考えて行動するキャリア自律の考え方が求められています。
雇用形態の多様化
雇用形態の考え方は、旧来の年功序列型からダイバーシティ推進へ移行しつつあります。個人においても、自身の能力を発揮できる道を探りながら、主体的にキャリアを選択するキャリア自律の考え方が浸透し始めています。
個人の価値観や働き方の変化
従業員の価値観は「仕事での成長」だけでなく「家族との時間」や「プライベートの充実」など、人生全体を見据えた自己実現へと広がっています。また、副業や兼業といった新しい働き方の選択肢も増え、組織や雇用形態に依存しないキャリア自律の考え方が重要視されています。
企業がキャリア自律支援に取り組むメリット
企業が従業員に対してキャリア自律に取り組むと、以下のようなメリットをもたらします。
生産性や組織力の向上
自身のキャリアと向き合いながらキャリアを開発していく従業員が増えれば、生産性の向上が期待できます。企業がキャリア自律を支援すれば、組織力に直結する定着率や採用力が高まるうえ、組織力の活性化も期待できます。
個人のスキルや能力の向上
企業がキャリア自律に取り組めば、従業員のスキルや能力の向上にもつながります。従業員のキャリアビジョンを企業が把握・理解し、チャレンジする機会を与えれば、企業と従業員のどちらにもメリットがある関係性を構築できるでしょう。
株主価値の向上
社員がキャリア自律をめざすことは、企業の人的資本を強化するだけでなく、外部へのPRとしても効果が期待されます。また、企業による適切なサポートにより、投資家などのステークホルダーからの評価が高まる可能性があります。
企業のキャリア自律支援における課題
企業がキャリア自律を支援することには、以下のような課題もあります。
理解不足が起こりやすい
企業が支援を呼びかけても、すべての従業員が同じ反応で取り組むとは限りません。積極的に取り組む従業員もいれば、関心を示さない従業員もいるでしょう。また、従業員本人がキャリア自律への意識を高めたとしても、上司の理解が得られずに行動を起こせないケースもあります。
企業体制が整備しにくい
従業員がキャリア自律を実現するために、発揮したいスキルを生かせるポジションが必ずしもあるとは限りません。キャリア自律を推進するためには、企業側による体制の整備も必要です。制度自体が機能しない状態では、従業員の諦めを生みやすくなります。
明確化しづらい
従業員にキャリア自律の意識があるとしても、実務・実績に紐づけできていない状態では評価基準が曖昧になってしまいます。昇進・昇格をめざしても、必要な要件や能力開発がわからないなどの状況に陥ってしまうでしょう。
また、他部門の職務内容や必要な能力などを明確にしていない場合は、従業員に伝わりにくくなります。キャリア自律を浸透させるためのプロセスを企業側が仕組みとして構築し、明確化するのも大切です。
キャリア自律の施策例
企業が従業員のキャリア自律を効果的に支援するには、以下のような施策があります。
キャリア研修・キャリアデザイン研修
近年は、20代・30代の早い時期からキャリアに関する機会を提供する傾向にあります。たとえば、新入社員から定年までのキャリア自律の全体像を描き、定期的な研修を導入するケースが増えています。キャリアの課題は、役職・年代などの属性によって異なるため、共通の課題を持った人同士をグルーピングして研修を行うと効果的です。
キャリアカウンセリング・キャリア面談・メンター制度
従業員の行動を促進したい場合において、キャリア研修のみでは不十分なケースもあります。そのため、企業側は従業員が現状を確認できる場を設けることが重要です。キャリアカウンセリング・キャリア面談・メンター制度などは、自分がどのように行動すればよいのかという確認の機会として活用できます。
越境学習・副業の機会提供
従業員が自己能力の市場価値などを知るには、雇用される能力を意味する「エンプロイアビリティスキル」を把握する必要があります。エンプロイアビリティスキルを自覚するには、越境的学習や副業・兼業などが効果的です。普段と違う環境に身を置くことで、従業員は現時点での価値や能力を確認できます。
また、社外の人との交流によって異なる視点を養うことができ、自らの不足部分の獲得や仕事上の工夫にもつなげられるでしょう。
学習機会の提供・支援
社会人が学びなおし(アンラーニング)を実践するには、時間も費用もかかります。目的や経済的環境などを考慮して、自身のキャリア形成のために必要な場所を選ぶことが大切です。企業がキャリア自律にプラスに働く学習機会を提供・支援することは、従業員の負担軽減にもつながります。
人事制度による機会の提供
従業員の能力を引き出すには、新たな職務を経験させるのも効果的です。たとえば、以下のような制度を活用するのもよいでしょう。
- ジョブローテーション…従業員のスキル・能力向上を目的に戦略的に人事異動を行う制度
- 自己申告制度…従業員が自らの目標・問題点・意向などの自己評価を申告する制度
- 社内公募制度…企業から募集されているポジションに対して従業員が応募する制度
- 社内FA制度…従業員が希望したい部署に自らを売り込んで異動する制度
企業がキャリア自律を支援する手順
企業がキャリア自律を支援するには、以下のような手順が必要です。
必要な人材像を具体的に示す
企業は目標達成のために、必要な人材像の定義を具体的に示すことが重要です。必要な人材像の定義を示すことは、従業員自身がどの程度組織に貢献できているかを検討する材料にもなります。さらに、企業は定期的に従業員と対話をする機会を設け、従業員との考えにズレがないかを確認することも必要です。
人事管理システムと連動させる
従業員1人ひとりの目標設定や評価基準を可視化するために、従業員が自発的に取り組んだ履歴は、人事管理システムに紐づけておきましょう。人材配置や昇進昇格者を決める際の参考にもなります。自分の取り組みが企業に評価されていると意識させることで、モチベーションアップにもつながるでしょう。
キャリアを考える機会や仕組みをつくる
自分を理解することは、キャリア自律への第一歩です。ほかの人と関わる機会が増えると自己理解はより深まる傾向にあります。従業員同士がキャリアを語り合う機会や仕組みを企業が提供できれば、キャリア自律の支援にもつながるでしょう。
周囲から自分がどのように見えているかを確認したり、スキルが習得できているのかを客観的に判断したりする手段として、アセスメントテストや360度フィードバックを導入するのもおすすめです。
企業がキャリア自律を支援する際の注意点
キャリア自律を促進する際は、以下のような点にも注意しましょう。
1人ひとりに適した期待値を伝える
従業員それぞれの性格や価値観は多様であり、能力にも個人差が存在します。そのため、企業は従業員ごとの期待値を適切に把握しなければなりません。
組織の目標と従業員のキャリアプランを一致させるためには、企業側から組織の現状や社内の職務内容について説明を行うことが重要です。さらに、従業員が自己理解を十分にしていない場合もあるため、上司や同僚との対話を通じて、自己理解を深める機会を設けることも欠かせません。
年代別の課題を提供する
キャリア開発は、年齢・属性ごとに支援方法が異なります。年齢や属性に見合った支援する必要があります。ベテラン・シニア人材に対しては、スキルや経験が生かせる場をつくりましょう。育児や介護に携わる従業員や、なかなか思う役職につけない従業員のキャリア開発支援も必要です。
機会を提供し主体的な行動を促す
従業員は急にやりたいことを聞かれて今後の行動を期待されても、迅速な対応はできません。場合によってはストレスになる可能性もあります。まずは従業員の主体的な行動を後押しできるように、企業側からキャリアを考える機会を提供しましょう。
まとめ
キャリア自律を企業が支援するのは、従業員個人のスキルや能力の向上だけではなく、組織全体の生産性・組織力・株主価値なども高めます。キャリア自律支援の手順や注意点を参考に取り組みを進めましょう。
キャリア自律支援に取り組むのであれば、ぜひリシテア/人財マッチングの導入をご検討ください。リシテアのシステムには、社内異動制度の運用を効率化できる強みがあり、複数の異動制度を一元管理して人事の課題を解決します。既存のシステムとも連携でき、スムーズな運用を総合的にサポートすることが可能です。詳しくは以下よりお問い合わせください。
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