働き方改革

テレワーク導入メリットを生かすための人事評価とは?

テレワークの導入は、ICT(情報通信技術)の利用により、時間・場所を有効に活用できる柔軟な働き方を可能にします。今現在、テレワークは、一人ひとりの働く意欲を高め、その能力を発揮できる働き方として注目されています。そして、テレワークの導入と同時に考えたいのが人事評価です。働き方・働く環境の変化に対応する人事評価を構築することで、業務効率を高め、会社の成長・新しい価値の創造につながるような人材マネジメントが期待できます。本稿では、テレワークが広がった背景と人事評価の課題、人事戦略としてのテレワーク導入のメリット、テレワークの導入と人事評価の改定を行うときのポイントを解説します。

テレワークの広がりと見えてきた人事評価の課題

新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけとして、テレワークの導入が進みました。テレワークは、場所や時間に対して柔軟な対応ができる働き方をいいます。社員は、通勤の負担軽減・育児や介護中であっても仕事の継続が可能であることなどメリットが大きく、企業にとっては、育児や介護を理由とした社員の離職防止策になるといえます。

総務省の「令和2年 通信利用動向調査の結果」を見ると、テレワークを導入した企業割合は47.5%と調査対象企業の約半数となっています。前年の調査と比較し、前年の20.2%から、2倍以上上昇していることが読み取れます。これは新型コロナウイルス感染症拡大による、テレワーク推奨が影響しているものと考えられます。導入目的を見てみると、感染症の拡大などを想定に含む「非常時の事業継続に備えて」という回答が68.3%と最多となっています。

一方で、テレワークの導入と同時に、さまざまな課題が出てきました。その1つが人事評価です。

上司は、部下の働く場所がオフィスからオフィス以外の場所になったことで、部下の仕事のプロセスが見えにくくなりました。その結果、従来の人事評価では、部下の定性的な評価が難しくなったといえます。

では、人事戦略としてのテレワークを導入するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

人事戦略としてのテレワーク導入のメリット

ここでは、企業側・社員側それぞれのテレワーク導入のメリットについて解説します。

  • 導入企業側のメリット
  • 社員側のメリット

1つずつ見ていきましょう。

導入企業のメリット

まずは導入企業のメリットについて4つ解説します。

コスト削減

テレワークの社員が増えることで、まずは通勤交通費の負担が減ります。そしてオフィススペースにも余剰が生まれます。それに伴い移転したり小規模化したりすることを検討するとよいでしょう。また、支店を統合して一部廃止することも可能です。見直しを行うことで家賃はもちろん、光熱費・通信費などのカットもできるでしょう。

従業員満足度の向上

完全なテレワークはもちろん、在宅・出社を選べるなどの環境整備は、ワークライフバランスの改善に繋がります。各従業員が自身のライフスタイルに合わせ、最適な働き方を選ぶことが可能です。テレワークが浸透することで、結果的に従業員の満足度が高まり、離職率低下などにも繋がります。

生産性の向上

例えば社員にとって、電車移動などによる出社は、不要な時間・ストレスが伴います。長期間継続することで心身の疲労に繋がり、生産性を低下させる要因となりかねません。テレワークによってこれらを排除できれば、従業員はより意欲的かつ集中して仕事に取り組むことができ、生産性の向上が期待できます。

感染症や災害のリスクを分散できる

新型コロナウイルス感染症をはじめ、感染症の流行や災害は、いつ起きるか分かりません。突然会社へ出社できない状況となった場合、通常であれば業務は完全にストップしてしまいます。さらに長期化した場合は、企業存続のリスクにもつながります。しかしテレワークを導入していれば、オフィスにいなくても多くの業務遂行が可能です。

社員側のメリット

次に、社員のメリットについて3つ解説します。

通勤時間の削減

通勤が不要になれば、通勤に要していた時間を他のことに活用できます。例えば十分な睡眠時間の確保・趣味時間の創出など、これまで後回しになっていたことができるようになるでしょう。さらに満員電車から開放されることでストレスが減り、仕事への集中力が高まることが期待できます。

居住地に左右されない

テレワークであれば、どこに住んでいても仕事ができます。例えば地方の出身地で両親と暮らしたり、結婚を機に夫・妻に合わせて引っ越ししたりしても仕事には支障ないでしょう。さらに転勤になる可能性も低くなることから、マイホーム購入時に、単身赴任などの対応を考える必要がないといえます。

家庭との両立が可能

テレワークであれば、仕事と家庭の両立がより柔軟になります。例えば子どもが突然熱を出した場合、これまでは子どもの看護のためオフィスに出勤ができないことから、仕事を休まざるを得ない状況が多くありました。しかし、テレワークによって在宅での勤務が可能になれば、子どもの様子を見ながら仕事を続けることが可能です。ただ、仕事とプライベートとの時間の切り分けは必要といえます。そのための長時間の離席については、勤怠管理システムで管理できることが望ましいでしょう。

テレワーク における人事評価の課題

前述のとおりテレワーク導入によるメリットも多い一方、課題もあります。テレワークでは、人事評価が難しいといわれています。その理由の1つが、上司から見て部下の日々の勤務態度が見えにくいことが挙げられます。上司が部下の勤務態度を目視できないことで、少ない情報から部下の評価をせざるを得なくなります。そのことで上司は、部下の課題・成長に対して正当な評価が行えなくなり、今後の人材育成にも影響を与える可能性があります。

多くの企業は人事評価において、定性評価と定量評価を組み合わせることが多い傾向にあります。定量評価は部下が成果として出した数字から評価が可能ですが、定性評価については勤務態度・仕事のプロセスがわからないと評価しづらいといえます。

そのため、仕事のプロセスが見えにくいという課題は、定性評価を付けるときに評価方法が属人的となり、公平性を欠くことにつながる懸念があります。

なお、定性評価項目としては、以下のような項目が例として挙げられます。

  • 社員の勤怠状況
  • 勤務態度
  • 服装などの身だしなみ
  • 他者との協調性、協力関係の構築
  • 取引先との関係性(良好な関係を築くことができるかなど)
  • 仕事に対する主体性のある取り組み
  • 業務改善のための取組への姿勢

テレワークを導入すると、対面で直接話をする機会が減り、コミュニケーションの不足を招く傾向にあります。このこともまた定性評価の行いにくさを助長しているといえます。定性評価の機会を確保するためにも、社員の自主性だけに任せず、企業側で対策を打つことが重要といえます。

従来の人事評価からテレワークにあった人事評価への変更が必要

これまでの人事評価では「人そのもの」が評価されてきました。社員は新卒で採用されたときから、さまざまな職種・部署への異動を繰り返す中で成長を続けます。そして、仕事の目的に対するプロセス・取組姿勢が評価され、最終的には、「企業にどのように寄与できる人材であるか」で判断されます。

しかし、テレワークでは、従来の人事評価を実施する場合、断片的な情報で評価せざるを得なくなり、正しい評価の実施が難しくなります。

テレワークでの人事評価では従来の評価方法からの変更が必要といえます。まずは、これまでの人事評価に対して不足事項や改善点がないかの検討から始めるとよいでしょう。

人事評価の項目を1つ1つ見直し、例えば「テレワークでは十分な評価を行うことができない項目」、「テレワーク以前・以後から在籍していた従業員に差異が発生する可能性がある項目」があった場合、評価項目から除外するなどの対応が必要といえます。

テレワークでの人事評価項目は、テレワークに適した項目であることが大切です。

テレワークの導入と同時に進める人事評価改革のポイント

テレワークの導入と同時に進める人事評価改革のポイントは、以下の3つです。

  • 成果と評価の見える化
  • 属人的な評価の回避
  • 経営方針に連動する評価制度の構築

1つずつ見ていきましょう。

成果と評価の見える化

テレワークの導入と同時に進める人事評価改革のポイントの1つ目は、成果と評価の見える化です。

テレワーク導入後、人事評価の見直しを行うときに大切なことは、オフィス以外での勤務が考慮された評価項目を策定することといえます。

上司が部下を評価するとき、対面での仕事が少ないと数値化されやすい評価軸である実績・成果に偏る懸念があります。部下の仕事ぶりが見えない場合に正当な評価を行うためには、定量評価を重視せざるを得ないでしょう。しかし、人事評価では定量評価だけでなく定性評価を加えて評価が行われる場合が多く、テレワークにおいても目に見えない定性評価を策定することが重要といえます。テレワークで定性評価を行う場合、成果に至るまでのプロセスをこまめにレビューする機会を作ることがおすすめです。定例でオンラインレビューを設定し、チェックを行うことで、正当な評価をするのに役立ちます。業務の見える化を進め、定量評価・定性評価のどちらかに偏らないような仕組みを設けることで、テレワークでの適切な評価が可能といえます。

属人的な評価の回避

テレワークの導入と同時に進める人事評価改革のポイントの2つ目は、属人的な評価の回避です。

テレワークでは、誰が評価しても差異が出にくいよう評価方法の統一を行うことが必要です。評価基準が不明確な場合、上司によって判断の偏りが出ることが考えられ、部下の不公平感を生む要因となる懸念があります。定量・定性、それぞれの評価方法を企業側で設定し、評価を行う上司の属人的な偏りが出ないように、細心の注意を払うことが求められます。策定後も判断を行うときに、曖昧な基準はないか測定を継続し、判断に迷う評価項目については評価方法を再度策定することも大切です。レスポンスや業務遂行におけるスピード感など、できるだけ定性要素がある項目についても、定量的に測定できるような方法を実施しましょう。

経営方針に連動する評価制度の構築

テレワークの導入と同時に進める人事評価改革のポイントの3つ目は、経営方針に連動する評価制度の構築です。

テレワークでは、経営方針と評価制度に一貫性が感じられない場合、従業員は自社に対するロイヤルティを保ちづらい状態となる可能性があります。これは、オフィスにいないことで職場の雰囲気を感じにくくなり、自社と自身の関係性が見出しにくくなることが起因するといえます。この状態が続くと、ストレスを感じたり自社への誇りを感じられなくなったりして、従業員の離職を招く懸念があります。また、従業員の信頼を得られないことは、顧客からの信頼喪失につながる可能性もあります。

そのためテレワークでの評価制度は、経営方針を落とし込み、方針をベースにしたプロセス・成果物に対しての評価基準を定めることが必要です。このような評価制度を構築することで従業員は、テレワークであっても自社に対するロイヤルティを持ち、業務に取組むことができるといえます。

テレワークに効果的な人事評価制度

本稿では、テレワークが広がった背景と人事評価の課題、人事戦略としてのテレワーク導入のメリット、テレワークの導入と人事評価の改定を行うときのポイントを解説しました。テレワークを導入することで、社員の満足度アップや生産性向上など、経営面でもさまざまなメリットが得られます。社内制度を変えたり、ITツールやサービスを活用したりすることで テレワーク導入の課題を解決することが可能です。テレワークでの人事評価では、定性評価におけるプロセス・評価基準の「見える化」を進めることで、上司・部下ともに明確な基準の元で評価が可能になります。
時代とともに働き方が変化する中、その流れの中で取り組みを策定しましょう。

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