タレントマネジメント
タレントマネジメントシステムの失敗例の原因と教訓を活かす
「タレントマネジメント」が注目されるようになってから、「タレントマネジメントシステム」を導入する企業も増えてきました。「一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会」の2013年度の調査によると、「タレントマネジメントシステム」を導入・検討している企業は14%にもなり、イノベーション促進に期待している企業は10.8%にのぼります。
タレントマネジメントへ期待している企業は多くなっていますが、システムを導入すれば良いというものではなく、タレントマネジメントへの理解も深めていなければうまく活用されない可能性もあります。陥りやすい失敗例を参考にしながら、タレントマネジメントシステムを上手に活用しましょう。
これまでの人事制度との違い
従来の人事制度は、役職や職務ごとにあるべき姿を描いて人材要件を出し、それに合わせることを社員に求めてきました。人事管理システムにおいても、各種届出や法的手続きのための社員台帳、給与支払いなど、人事部門で必要な機能や情報が中心でした。
一方で、タレントマネジメントは経営戦略に沿うように人材戦略をたてる、というもので、人材の適材適所への配置や組織の維持、育成が重要なポイントになります。そのためにも、ビジネスに必要とされるスキルや経験、能力、人となりを把握することが重要になります。
陥りやすい失敗例と注意するべきポイント
陥りやすい失敗として、「情報をうまく活用できない」ということが挙げられます。
注意するポイントとしては「欲しいデータ」と「集められるデータ」を分けておくことです。人事システムの代替として導入してしまったがために、あれもこれもとデータを取り入れてシステム構築を始めてしまい、タレントマネジメントに必要なデータをタイムリーに引き出すことが困難になってしまうことがあります。
そのためには人材データをタレントマネジメントに必要なデータと、その他の処理に必要なデータに分けることが必要になりますが、ここが非常に難しいポイントでもあります。
パフォーマンスの高い人材の維持や、潜在タレントの育成、という観点からすると、人事部のデータが人材データに適しているとは言えない場面も多く見られます。現場でのプロジェクト履歴や、営業成績、将来のキャリアビジョンや人となりなど、「人事・給与」の観点で集めてきたデータと、「タレントマネジメント」で必要となるデータは大きく異なります。このことに自覚できないと、仮に情報を一元管理することができても、必要な情報がない、と失敗に終わってしまいます。
タレントマネジメントを成功に導くために
タレントマネジメントを成功に導くために必要な情報を集めることは困難であり、社員それぞれの協力が必要となります。なかには、「従業員からデータを集めることができない」と失敗するケースもあります。
社員の協力を得るためには、タレントマネジメントが社員のキャリアパスにも有効であることを伝えるとよいでしょう。「一般社団法人 PMI日本支部」のレポートによると、タレントマネジメントが成功している企業では、潜在能力の高い人材の育成や、昇進に向けた逸材の選別、プロジェクトマネジャーや上級管理者へのキャリアアップ、といった点にも効果が出ている、とされています。
業績に応じた報酬だけでなく、「成長機会の創出」といった面においても、社員に対してメリットがあることを伝えることで、社員はタレントマネジメントに必要な情報を提供してくれるでしょう。
人事組織を改革し、戦略人事機能へ転換
タレントマネジメントを失敗に終わらせないためには、システムの導入だけでなく、事業成長を支える「あるべき人材マネジメントの姿」を明確にイメージしなければなりません。
人材の確保や育成は、企業の成長になくてはならないものです。
人事部門においても、事業戦略にそった人材マネジメントを行うことが、経済がグローバル化した現代において、企業が次のフェーズに進めるかどうかの鍵となるといえるでしょう。