タレントマネジメント
タレントマネジメントの本質と成功させるキーポイント
経済のグローバル化にともない、海外企業との競争も激化してきました。日本の賃金水準を見てみると、依然国際的には高いことに変わりなく、賃金水準の低い途上国の技術発展もあって、日本企業にとって「製品を大量に生産し安く供給する」という戦略は困難を極めています。
アジア圏の各国においても、加速的に成長を遂げており、PwC Saratoga※の調べによると、“ビジネスリーダーの多くは「人材」こそが、その成否を分けるポイントであり、同時に組織の成長を左右するものであるとの見解を示している”としています。
- ※出展:『アジア地域におけるタレントマネジメントの動向調査』 PwC Saratoga Asia-Pacific
その中で、日本においても人材戦略と経営戦略の方向性を合わせる「タレントマネジメント」が注目を集めています。
「タレントマネジメント」の本質とは
タレントマネジメントとは、単に人事制度の改革ではありません。
タレントマネジメントの本質は、社員のもつ能力や才能を最大限に引き出し、生産性の改善や社員の意欲向上を図り、ビジネス成果に繋げていくということです。
そのためには、個々の能力の見える化と、適材適所の人材配置、何よりも経営戦略と方向性を合わせることが重要となります。
タレントマネジメントを成功に導くキーポイント
優秀な人材の確保は、企業間の競争が激化するのにともない厳しさを増しています。
「少子化に始まる中長期的な労働力の不足」や、「優秀な人材の報酬の高騰」、「マネジメント層の不足」に「育成計画と事業計画の乖離」によって、人材の確保についての対策が急務となるといえるでしょう。
こうした変化の中で注目されるタレントマネジメントですが、成功に導くためには「目標設定」と「評価」がキーポイントになります。
1.人材の目標設定と評価
事業計画に目標があるように、人材獲得にも目標設定は重要になります。
企業ごとに成功に対する目標となる人材が変わってきます。まずはどのような人材がいつまでに何人必要なのか、というゴールを設定することが必要です。そのゴールに向けて、育成や採用を行い、人材目標が達成できたら、それが事業の成長にどれほど貢献できたのかを評価します。
ただし、前述したPwC Saratogaの調べでは、“新規雇用者の5人のうち1人が入社後1年以内に離職する”という衝撃的な報告もあがってきています。 優秀な人材の採用が困難であり、かつ新規雇用者の離職率も問題となるため、社員の育成と適所への配置も重要なキーポイントとなります。
2.社員の育成と配置、評価と報酬
経営戦略と人材戦略とを組み合わせたら、今度は人材戦略における評価制度を整備することがタレントマネジメントを成功へと導きます。
そのためには、社員の情報を集約したデータベースの構築が必要になります。「評価」を基準に情報を標準化することが重要です。ポジションごとに必要なスキルセットや経験と責任、権限を明確にし、その人材要件にもとづいて人材を評価します。
それによって維持しなければならない「ハイパフォーマー」や、育成していくべき「潜在タレント」を導き出します。「ハイパフォーマー」の離職は、生産性の低下を招くだけでなく、社内のモチベーションの低下にも繋がります。組織風土の維持や、ナレッジの確保といった観点からも悪影響を及ぼしかねません。
社員のエンゲージメント低下にはさまざまな要因が考えられますが、「社員が企業に求めるもの」と「企業が社員に与えられるもの」のミスマッチを考慮する必要があります。
PwC Saratogaの調査によると、20代から30代前半の若手社員へのアンケートでは、52%もの人が「成長機会の提供こそが、企業の魅力につながっている」と答えたそうで、業績連動型のインセンティブ体系は、社員のモチベーション向上に必ずしも機能しなくなっているのではないか、としています。
タレントマネジメントの中長期的な改善と成長を図る
一般社団法人 PMI日本支部のレポートによると、“高い業績を達成する組織は、業績が振るわない組織の2倍以上も、タレント・マネジメントを組織戦略に合わせる傾向にある”としており、経営戦略にそったタレントマネジメントを行うことで、著しい競争優位性が発揮できるとしています。
- ※出展:『競争に勝つ 効果的なタレント・マネジメント』 一般社団法人 PMI日本支部
タレントマネジメントプログラムの見直しと組織の維持をしつつ、中長期的な成長を図りましょう。