健康管理・健康経営
健康経営の取り組み方
~具体的施策や女性の健康課題対策・事例を紹介
「人事総合ソリューション リシテア」より健康経営に関するお役立ち情報のご紹介です。
従業員の健康状態を改善し、パフォーマンスを向上させることで、生産性や収益性の高い組織の実現をめざす「健康経営」。労働力の確保や社会保障費の抑制にもつながるため、政府はさまざまな制度を創設し企業の健康経営を推進しています。
くわえて、女性の社会進出が進み、その活躍が期待される世の中の流れから、女性の健康課題に対応することが健康経営を実践するうえで重要な位置づけになりつつあります。
この記事では、健康経営の考え方や具体的な取り組み方法と、女性の健康課題解決の重要性や具体的な取り組み方についても解説します。また、健康経営の推進で成果を出している企業の事例をご紹介します。
健康経営とは
健康経営とは、従業員の健康管理を経営課題の1つと捉え、戦略的に実践することをいいます。アメリカの経営心理学者であるロバート・ローゼン氏の「健康な従業員が収益性の高い会社をつくる」という考えにもとづき、従業員の健康増進によって生産性や企業価値の向上につなげようというものです。
健康経営がうまくいっている企業では、次の①〜④が繰り返される好循環が生まれます。
- ①企業の健康投資により従業員の健康が増進する
- ②従業員の集中力が高まりパフォーマンスが発揮される
- ③企業イメージの向上や離職率の低下、保険費の負担減につながる
- ④企業収益が向上し、健康維持のためのさらなる投資が可能になる
反対に、従業員の健康に配慮せず不健康な状態を放置していると、集中力が低下し、休職や退職が増え、企業のイメージダウンと保険費の負担増から収益が悪化、さらに健康への投資が難しくなり不健康状態を改善できないという負のサイクルに陥ります。企業には、健康経営の取り組みは将来的に自社の収益性を高める投資であると考え、従業員の健康保持・増進に積極的に取り組むことが求められています。
企業が健康経営に取り組む具体的な方法
企業が健康経営に取り組む方法として、基本的な流れをご紹介します。
健康経営を経営方針に位置づける
健康経営に着手する際は、はじめに経営者がその意味や重要性を理解し、社内外へ発信します。具体的には、経営方針や経営理念の中に明文化する方法や、コーポレートサイトや社内掲示板などにメッセージを掲載する方法があります。
健康経営への取り組みを宣言する際は、曖昧な印象にならないよう「なぜ取り組むのか」「何をめざすのか」を明らかにすることが大切です。また、実施予定の取り組みや主体となる部署など、可能な限り詳細をあわせて告知するのが理想です。
組織体制をつくる
健康経営に取り組むには、従業員の健康保持・増進を着実に進められる組織体制の構築が必要です。具体的には、プロジェクトチームや専門部署の発足、もしくは人事部・総務部など既存の部署に専門の担当者を置く方法があります。
組織体制をつくる際は、外部からアドバイザーを呼んだり、担当者への研修を実施したりすることで、取り組みの実効性を高められます。また、企画段階から全体会議や役員会などで取りあげ、経営層と取り組みの必要性を共有することも重要です。
課題を分析する
従業員の勤怠情報や休職者数、健康診断の受診率、ストレスチェックの結果などから、自社が抱える課題を分析して対策の検討につなげます。
特定の部署でストレスを感じている従業員や健康診断の未受診が多い、管理職の残業時間が突出して多いなど、部署や階層によって異なる課題を抱えている場合もあります。具体的な健康課題を明らかにする際は、健康診断結果や特定保健指導に関するデータ、レセプト情報など、従業員の健康に関するさまざまな情報を掛け合わせて分析するのが有効です。
施策を策定し実行する
社内の課題が明らかになったら、解決につながる施策を考え、実行に移します。
施策の例には次のようなものが挙げられます。
- ポスター掲示や記事配信などの啓蒙(けいもう)活動
- ノー残業デーや残業の事前申請制の導入
- 社食で健康づくり支援メニューを提供
- 管理栄養士による個別の食事指導
- ミーティングスペースにスタンディングデスクを導入
- メンタルヘルス研修やラインケアセミナーの実施
新たな施策を取り入れる際、浸透や定着、効果の発現までには時間がかかる場合もあります。評価や改善を繰り返しながら、根気強く取り組むことが大切です。
取り組みを評価する
施策を実施したら「どのくらい実行されたか」「どのような結果が出たか」などの評価・検証をおこないます。
評価の際は、経営層の積極性や組織体制の整備が十分か、施策が効果的に機能しているか、施策の成果が健康増進や生産性向上に結びついているかなど、さまざまな視点から考えることが重要です。自社が掲げた健康経営の目標や目的に近づいていないようであれば、その都度改善をおこない、施策の精度を高めていきます。
上記が健康経営に取り組む際の基本的な流れとなりますが、今後はこれまで以上に「女性の健康課題」が重要視され、健康経営に取り組むうえでは対応が不可欠となってくるでしょう。
そこで「女性の健康課題」への取り組みについてもう少し詳しく解説していきます。
健康経営の取り組みで関心が高まっている「女性の健康課題」
女性の社会進出が進み、職場で働く女性が増えている今、企業による取り組みが不可欠となっているのが「女性の健康課題」への対応です。2019年に経済産業省が実施した調査では、健康経営を推進する企業において最多の56%が「女性特有の健康問題対策」に高い関心を持っていると回答しています。
出典:「健康経営における女性の健康の取り組みについて」(経済産業省)
これまで企業が実践する健康増進の取り組みは、男性に多いメタボリックシンドロームへの対策が中心となっていました。しかし、日本の全従業員数の4割を超える女性従業員の健康に対する取り組みを増やすことは、企業のさらなる活性化につながるのではないかという見方もあり、女性の健康課題への対策に関心が高まっています。
女性の健康課題の解決を企業が重要視する背景
企業にとって、女性の健康課題の解決が重要となる理由には以下が挙げられます。
生産性の向上と人材不足の解消
少子高齢化により労働人口が減少するなか、内閣府が掲げる「一億総活躍社会」を実現するには女性の活躍が欠かせません。健康経営を通じて女性の健康課題に対応し、女性が働きやすい職場環境を整えることで、労働生産性の向上や企業の業績アップが期待できます。
また、企業が主体となって健康課題の解決に取り組むことは、従業員の離職防止や優秀な人材の獲得につながり、結果的に人材不足の解消に結び付くと考えられます。
「健康経営優良法人」の認定
健康経営優良法人とは、経済産業省・日本健康会議から「特に優良な健康経営を実践している企業」として認定された法人のことです。2018年から「健康経営優良法人認定制度」の健康経営銘柄を選ぶための認定要件に「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」が追加されました。健康経営においてはこれまで以上に、女性の健康に対する取り組みの重要度が増している状況といえるでしょう。
女性の健康支援を考えた健康経営の取り組み
一般的な健康経営の取り組み方法については先にご紹介しましたが、ここでは企業が女性の健康支援に取り組むための施策についてご紹介します。
健康相談窓口の設置
女性の健康支援をおこなうには、女性特有の病気や症状についての悩みを気軽に相談しやすい環境づくりが不可欠です。いつでも医師や保健師に相談できる女性専用の健康相談窓口を設置するなど、人事部を中心に女性従業員の健康を支援する施策を取り入れる必要があります。
リテラシーの向上
社内で女性の健康支援を推進していくためには、従業員のリテラシー向上が欠かせません。女性の健康課題に関する情報は、社内ポータルサイトや社内報、研修・セミナーなど、さまざまな形式で発信することが大切です。企業が主体となって情報発信することで、女性従業員のみならず、男性や管理職などにも幅広く周知され、会社全体で知識や対応方法を学ぶことができます。
検診の受診率向上
人間ドックや子宮頸(しきゅうけい)がん・乳がん検診など、女性特有の病気を早期に発見するための検査費用の補助により、検診の受診率向上が見込めます。取り組みの際は、業務が忙しくて受診できないということがないように、就業時間内に受診できるようにするなど、女性従業員の負担を抑えるサポートも必要です。
健康経営の取り組みの参考になる企業事例
健康経営を宣言している企業は、自社の課題に合わせてさまざまな取り組みをおこなっています。ここでは、参考になる企業事例をご紹介します。
心身の健康を維持・増進できる職場づくりを推進:味の素株式会社
コロナ禍による在宅勤務の増加で生活スタイルが変わった影響から、従業員の心身の不調が懸念されていた味の素。その予防やセルフケアによる健康維持・向上を重点課題の1つとし、心身の健康を維持・増進できる職場環境づくりに取り組みました。
具体的な取り組みとしては、全従業員を対象とした健康診断後の個別面談、メンタルヘルス回復および再就業支援プログラムの実施、健康管理業務を幅広くカバーする管理システムの導入などが挙げられます。そのほかにも、健康改善がみられた従業員を表彰する制度や生活習慣病予防の食事指導セミナーの開催、健康アプリによるアドバイス、社員食堂での健康メニューの提供など、心身の健康を守るためのさまざまな取り組みを実践し、従業員のパフォーマンス向上を支援しています。
出典:健康長寿産業連合会「2022 健康経営 先進企業事例集」
本事例公開サイト:https://www.well-being100.jp/policy/20230316482/
女性の健康に対するリテラシー向上を推進:株式会社ファンケル
化粧品や健康食品の製造・販売を手がけるファンケルは、女性従業員の割合が約8割と高いことが特徴です。男性従業員にも女性の健康に対する理解を促すために、オンラインセミナーなど外部サービスを活用した「女性の健康に関する教育」を継続しておこない、リテラシーの向上を推進しています。
また、女性の健康専門の相談窓口や健康支援を推進する部署の設置、婦人科健診・検診の費用補助など、女性の健康を支援するさまざまな施策を取り入れています。これらの取り組みは高く評価されており、特に優良な健康経営を実践している法人として、経済産業省・日本健康会議による「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を6年連続で受けています(2017〜2022年)。
出典:健康長寿産業連合会「2022 健康経営 先進企業事例集」
本事例公開サイト:https://www.well-being100.jp/policy/20230316482/
健康経営に取り組み、従業員がいきいきと働ける環境を実現しよう
健康経営を推進することで、従業員のパフォーマンス向上や離職率の低下など、得られるメリットが多く、企業は健康経営に取り組むことがさらに求められることでしょう。
そのなかでも、近年は健康経営を推進する企業の間で、女性の健康課題の対策に高い関心が集まっています。くわえて、女性従業員の活躍により生産性向上や人材不足の解消が見込めることや「健康経営優良法人」の認定項目に女性の健康に対する取り組みが追加されたことなどを背景に、女性の健康課題の解決が企業経営において特に重要視される時代になってきました。
課題の発見や施策の策定には、経済産業省が実施している健康経営度調査への回答が役立つほか、ストレスチェックの結果や勤怠情報など、既に社内にある情報をしっかりと分析することも重要です。
健康経営にはメンタルヘルス対策や女性従業員のケアなどさまざまな施策がありますが、日立ソリューションズでは企業の女性活躍推進を健康面から支援するサービスを提供しています。女性活躍推進に向けた取り組みをお考えの場合は、お気軽に当社までお問い合わせください。