仕事と介護の両立は、「個人の問題」では終わらせない

仕事と介護の両立は、もはや一部の人の個人的な悩みではありません。
働き続けたいという想いを、企業としてどう支えるのか。
日立ソリューションズでは、2023年度からこのテーマに向き合ってきました。

本コラムでは、現場で見てきた実情をもとに、仕事と介護の両立を「組織の課題」として考えていきます。

執筆者

株式会社日立ソリューションズ 経営戦略統括本部
チーフエバンジェリスト兼人事総務本部 本部員

伊藤 直子(いとう なおこ)

【伊藤 直子氏プロフィール】
1990年津田塾大学卒業。日立中部ソフトウェア(現 日立ソリューションズ)に入社。ソフトウェア製品開発、ネットワーク・セキュリティSEを経て、2004年管理職へ。2015年から働き方改革のプロジェクトに入り、自社の改革推進とともに、企業の働き方改革をITで支援する事業に携わっている。

介護は、静かに職場に入り込んでくる

仕事と介護の両立は、「個人の問題」では終わらせない

仕事と介護の両立というテーマに向き合うようになって、はっきりと見えてきたことがあります。
それは、介護は誰にとっても、ある日突然始まる可能性があるということです。

しかし実際に当事者となった社員の多くは、制度をよく知らない、相談先がわからない、上長や同僚に迷惑をかけたくない――そうした思いから、誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう傾向があります。

その結果、介護は職場に急激な混乱をもたらすことは少ないものの、多くの場合、とても静かに、しかし確実に、日常業務の中に入り込んできます。

「親の通院の付き添いで時間休をとることが増えた」
「急な電話で、会議を中座することが増えた」
「これまで当たり前にできていた残業や出張が難しくなった」

こうした変化は、本人にとっても周囲にとっても、“まだ調整できる範囲”として受け止められがちです。

そのため、介護は問題として可視化されにくく、組織としての対応も後手に回りやすくなります。

しかし、介護は時間の経過とともに負荷が軽くなるとは限りません。むしろ状況は変化し続け、先の見通しが立ちにくいからこそ、働く人の不安や負担は、静かに積み重なっていきます。

その結果、「仕事を続けることが難しい」という選択肢しか見えなくなってしまうケースも、決して少なくありません。

私がこれまでの取り組みの中で強く感じているのは、仕事と介護の両立は、もはや個人の努力や工夫に委ねるテーマではないということです。

それは静かに進行しながら、確実に組織全体に影響を及ぼす課題であり、企業として向き合うべき経営課題なのです。

「制度」だけでは両立できない理由

多くの企業には、介護休業や短時間勤務、在宅勤務といった制度が整備されています。

しかし、制度があるだけで両立できるほど、介護は単純ではありません。介護は長期戦になることも多く、状況は刻々と変わります。

「今日は大丈夫でも、明日はわからない」
そんな不確実性の中で働き続けるためには、制度以上に職場の理解と空気が重要になります。

実際の現場では

  • 制度があること自体を知らない
  • 知っていても、どのタイミングで使えばよいのかわからない
  • 上司や同僚に、どう説明すればよいか迷ってしまう
といった“見えない壁”が存在しています。

介護は、育児以上に状況の個別性が高く、終わりが見えにくいテーマです。だからこそ、「前例がない」「どう判断すればよいかわからない」と感じる管理職や職場も少なくありません。その迷いが、結果として当事者を孤立させてしまうことがあります。

基本的なリテラシーとして、

  • 介護に関する相談は「地域包括支援センター」が起点になること
  • 介護休業は「介護をするための休み」ではなく、介護の体制を整えるための準備期間であること
この二点を、本人だけでなく、職場やマネジメント層が理解しているかどうかで、両立のしやすさは大きく変わります。

制度は重要です。
しかし、それだけでは不十分です。

「相談していい」「一緒に考える」――
そんな職場の姿勢があってこそ制度は機能し、なにより本人の心理的負担が大きく軽減され、両立できる組織へと近づいていくのだと考えています。

「みんなで向き合う」ことで、働き続けられる

仕事と介護の両立に、万能な解決策はありません。
だからこそ私は、
**「一人で抱え込まない仕組み」と「みんなで向き合う文化」**が何より大切だと考えています。

情報を知ること。
経験を共有すること。
不安や困りごとを、声に出していいと思えること。
それらが積み重なることで、介護は「見えない問題」ではなくなっていきます。

実際、継続的な発信や対話の場をつくってきたことで、
「介護について職場で話しやすくなった」
「将来への漠然とした不安が軽くなった」
そんな声を多く聞くようになりました。

仕事と介護の両立は、働く人のキャリアを守るだけでなく、企業の持続性にも直結します。

誰かが辞めなくてすむこと。
誰かが力を発揮し続けられること。
それは、組織にとっても大きな価値です。

介護は、「一部の人の特別な事情」ではありません。
誰もが向き合う可能性のあることとして捉える必要があります。

  • 介護について、元気なうちから知っておく
  • 職場で話題にしてもよいテーマとして共有する
  • 困ったときに、一人で抱え込まなくてすむ環境を整える

こうした積み重ねが、働き続けられる安心感を生み、結果として組織全体の力を高めていきます。

仕事と介護の両立が、「特別な配慮」ではなく「あたり前の前提」として語られる社会へ。

それが、これからの企業に求められている姿だと、私は思っています。

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