長時間残業削減
長時間残業が与える会社へのリスク
長時間労働がよくないことは、誰もが自覚しています。にもかかわらず、なぜ残業が増え、休むべき休日に出勤し続けなければならないのでしょうか。また、なぜ有給休暇をきちんと消化できないのでしょうか。昨今、日本政府を始め、ワークライフバランス(ワークライフシナジー)が叫ばれている社会的風潮のなかでも、高度経済成長の名残からか依然として長時間労働を当たり前として考えている企業はたくさんあります。今回は長時間労働が会社に与えるリスクを考えてみましょう。

会社自身が負うリスク
1.コスト増大と採用のリスク
長時間残業が定常化してしまえば、そこで働く従業員に残業代を支払わなくてはなりません。最近では「ホワイトカラーエグゼプション」などの制度も導入されていますが、例え人件費が低く抑えられたとしても、光熱費などの負担がかかります。また、長時間労働が当たり前の会社に入社したいと考える就職希望者は少ないでしょう。そうなった場合、新卒の正社員を獲得する場合にも公募費用が通常以上にかかってしまう恐れがあります。もちろん、お金をかけても新入社員を獲得できないケースもあります。
2.社会的信用の失墜リスク
もし会社が「ブラック企業」として非難の的になった場合にはどうでしょうか。どんな立派な事業をしていても社会的な制裁を受けることは間違いありません。例えば、不買行動、新入社員の未獲得、従業員の離職など数えればきりがありません。しかも、1度失った信用を取り戻すことは非常に難しいことです。信用の失墜は資金調達の難しさを始め、会社運営のあらゆる面で不都合に働きます。
従業員が負うリスク
1.うつ症状発生リスク
過剰な長時間残業は従業員を疲弊させ、意欲を下げていきます。短期的な過労働ならば従業員も数日の休暇を取れば回復するでしょう。しかし、慢性的な長時間残業が続くと、睡眠や休養の機会を奪われ、体が十分にリラックスできないために、疲労が蓄積していきます。その結果、うつ症状を発生して出社ができなくなってしまい、会社の最大の財産である人材を失う結果になりかねません。通常、うつ症状からの回復には1年以上の期間を有することも珍しくなく、その間の給与保証や従業員からの訴訟を考える場合には数千万円に及ぶ損金を計上するケースも考えられます。
2.過労死のリスク
さらに過労働が進んだ場合には従業員が死亡してしまう場合があります。死亡の原因はさまざまですが、自殺であっても病状による死亡であっても、
①慢性的に残業時間が月80時間を超えている
②死亡直前に月100時間を超える残業を行っていた
など、上記のような場合には、医学的にも健康障害のリスクが高くなることが知られており、労災の問題になります。もし労災の認定が下がった場合には、会社側は従業員の家族から民事訴訟による損害賠償責任を求められるリスクも高まります。
株主が負うリスク
1.株価低下のリスク
「ブラック企業」と認定されてしまった場合には、世間的な印象が大きく下がります。その印象は株価にも反映され、株価の低下を招きます。不買運動などが起こった場合には会社の業績は悪化し、さらに株価は下がります。株価が下がると信用が失墜し、不買運動、業績悪化のサイクルが続き、株価はどんどん低迷していきます。そうなると株主はその会社の株式を持つ理由もなくなるので、株主からの信用も失墜するリスクがあります。
2.会社倒産のリスク
上記のように株主からの信用が失墜してしまった場合には、会社としての株価はどんどん下がっていきます。株価の低下はその会社の資本の低下を招きます。会社としての資本金が少なくなれば、会社の安定した運営はますます困難になります。安定した運営を試みても資金調達もできませんし、業績が上がる気配がないと、働いている従業員もモチベーションを失います。このような状況のなかで業績のV字回復も望めません。そうなれば遅かれ早かれ会社が倒産してしまうリスクは十分にあります。