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セミナーレポート

リシテアユーザ座談会 ~エンゲージメント3.0~ 第3回
仕事と組織へのエンゲージメントをベースにしたセルフマネジメントで企業価値を高める

日付 2019/02/14
参加者 企業の人事部門リーダー 12名
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
日付
2019/02/14
参加者
企業の人事部門リーダー 12名
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸

日立ソリューションズでは、人事総合ソリューション「リシテア」のユーザ企業様を主な対象に、「エンゲージメント」をテーマにした座談会を2018年12月~2019年3月にかけて実施しております。
近年、人事部門の課題は、制度の改善やオペレーションの充実から、より戦略的な施策実施へとシフトしてきています。とりわけ、従業員とのエンゲージメント、ホールネス、セルフマネジメントという概念が、企業の大小を問わず重要となってきており、そのための組織体制づくり、チェンジマネジメントが、人事部門にとって重要課題になってきております。
本座談会では、エンゲージメントについての深い知見をお持ちの研究者の方、先進的な取り組みをしておられる企業様をゲストに迎え、リシテアユーザ企業様の現場でのさまざまな課題・取り組みを共有し、エンゲージメントを高めることによって、企業価値を高める方法を見出していきたいと考えております。
今回は、2019年2月14日に開催された第3回の内容をレポートいたします。

ゲスト紹介

島津明人氏 北里大学 一般教育部人間科学教育センター 教授
早稲田大学第一文学部、同大学院文学研究科卒業後。「ワーク・エンゲイジメント」「ストレス対策」「ワーク・ライフ・バランス」をテーマに、企業組織における人々の活性化・メンタルヘルスを研究するとともに、さまざまな企業のエンゲイジメントへの取り組みを支援している。2017年4月より現職。

松田光憲氏 株式会社オズビジョン 執行役員事業推進部長
IT企業のエンジニアや、株式会社はてな の人事・総務部長などを経験し、株式会社オズビジョンでは事業推進部長として組織開発全般に携わる。オズビジョンは、新しい組織のあり方を紹介した書籍「ティール組織」に、価値観の浸透やホールネスを重視した経営の事例として、唯一紹介された日本企業で、話題となっている。

小能拓己氏 株式会社アカツキ 人事企画室WIZ HEARTFUL領域リーダー
インターネット調査会社で、広報や営業、マーケティングリサーチなどに従事し、2014年に株式会社アカツキに入社。新卒採用などの職務を経て、現在は、人事企画室の中で、主に企業文化や価値観を社内に浸透させるセクションでリーダーを務める。

北里大学教授 島津明人様 講演 
ワーク・エンゲイジメントを組織に浸透させるには?

冒頭、第1回座談会でお話しいただいた「ワーク・エンゲイジメントとは何か」の振り返りから講演がスタートしました。そこでは、ワーク・エンゲイジメントの定義を再確認するとともに、ワーク・エンゲイジメントには、外発的動機付け(給料や人間関係でやる気が高まっている状態)よりも、内発的動機付け(自分自身がこの仕事をとても面白いと感じ、自ら活気づいている状態)が強く影響することなどが補足されました。
さらに今回は、ワーク・エンゲイジメントを高めるために人事部門が何をすべきか。という問いに焦点を当て、ワーク・エンゲイジメントを高める2つの要素、「個人の資源」と「仕事の資源」のうち「仕事の資源」について、研究データ(※)を基に、掘り下げて解説をいただきました。
※Inoue, A., Kawakami, N., Shimomitsu, T., Tsutsumi, A., Haratani, T., Yoshikawa, T., Shimazu, A., & Odagiri, Y. (2014). Development of a short questionnaire to measure an extended set of job demands, job resources, and positive health outcomes: The New Brief Job Stress Questionnaire. Industrial Health, 52, 175-189.

まず前提として、「仕事の資源」は大きく分けて、下記の3層構造になっているとのこと。
(1)事業場レベル資源(例:経営層との信頼関係、個人の尊重、公正な人事評価、キャリア形成など)
(2)部署レベル資源 (例:上司のサポート、同僚のサポート、上司のリーダーシップ、グループの有能感など)
(3)作業レベル資源 (例:仕事のコントロール、仕事の適性、技能の活用、仕事の意義、成長の機会など)
これを踏まえ、各レベルの資源とワーク・エンゲイジメントとの相関を調査した結果(N=1398、日本人対象)を紹介いただきました。

その中で、島津様が強調されたのは、事業場レベル資源である「経営層との信頼関係(相関係数0.421)」と「個人の尊重(相関係数0.514)」、部署レベル資源である「上司のリーダーシップ(相関係数0.429)」と「グループの有能感(相関係数0.482)」、作業レベル資源である「仕事の意義(相関係数0.738)」でした。 これらは、過去2回の座談会で議論してきた、従業員エンゲージメント先進企業の特徴とも類似しています。 ワーク・エンゲイジメントを高める要素である「仕事の資源」を3層でとらえ、それぞれのレベルで対応を考えるべきこと、また、経営層との信頼関係を強化するためには上司のリーダーシップがキーになったり、 企業トップが理念やビジョンをしっかり伝えることで従業員は仕事の意義(≒やりがい)を感じるようになるなど、各レベルが影響し合うことを意識した対応も必要であることが示唆されました。

なお、講演の最後では、このような「仕事の資源」を持つ職場を作るためのヒントとして、WHOの世界健康職場モデル、アメリカ心理学会の心理的健康職場プログラムが紹介され、また、日本においては、日本生産性本部の「健康いきいき職場づくりフォーラム」が策定したガイダンスで、このような職場づくりに向けたガイドが示されていると紹介されました。

北里大学教授 島津明人様 講演

ディスカッション1 人事リーダーが考える理想的な組織の姿とは

前回までの座談会の議論、および今回の島津様のご講演をヒントに、「人事部門が何をすべきか」をさらに掘り下げるため、 そもそも人事はどんな組織を目指すのか、まずは自組織のありたい姿を、参加者である人事リーダーの方々に考えていただきました。(下記Q1とQ2について、付箋紙を使ったワークショップを実施。)
※エンゲージメント3.0実現の先で目指すのが、この理想的な組織の姿との位置づけ。

Q1.あなたが考える”当社らしさ”、大事にしたい ”価値観”とはどのようなものですか?シンプルなキーワードで表現してください。
Q2.あなたの会社で、組織全体にそのような価値観が共有されているシーンを、「~している」という表現で表すと、どうなりますか?(理想形でよい。今現実に出来ているかは問わない。)

この結果が【図1】になります。

【図1】理想の組織を表すキーワードと具体的なシーン

ここで出た意見について、皆でディスカッションしながら噛み砕き、さらに人事部門の視点で読み替えると、「理想的な組織の姿」は次のようになりました。

  • 個人の成長を実感できる組織(技術力を磨くことによる成長が出来る組織)
  • 自律的、主体的に動いたときに仲間や会社がサポートしてくれる組織
  • 会社と従業員との家族のような関係性がある組織
  • 自分の仕事がエンドユーザーに提供している価値を知り、仕事の意義を感じられる組織
  • 自分の理想に向けて挑戦している組織
  • ワクワクが常に重視される組織
  • あるがままの自分でいられる組織
  • 個人のハピネスが重視される組織
  • 上下関係なく、言いたいことを言い合える組織
  • 自分たちの声が反映される組織

  • これらは、まさに、自分自身、仲間・環境、組織という3つのエンゲージメント(エンゲージメント3.0)を実現している姿と言えるのではないでしょうか。

    ディスカッション2 どのように理想の姿を実現していくのか

    次に、理想の組織の姿を実現していくためのアクション(エンゲージメント3.0を実現する企業マネジメントのあり方と、人事部門が行うべき仕組みの構築)について議論しました。ここでも付箋紙を使ったワークショップを実施し、下記Q3、Q4について回答いただきました。

    Q3.企業として大切にしい価値観が、個人の行動へと結びつき、理想的な組織の姿を実現するためには、どのようなアクションが必要でしょうか?(主語は誰でも良い。)
    Q4.そのようなアクションにおいて、人事部門が中心となって取り組むべきことは何でしょうか?(主語を人事部に限定。)

    この結果が【図2】になります。

    【図2】理想の組織を実現するためのアクション

    さらに、この結果を基に皆でディスカッションした結果を整理すると、人事部門がやるべきこととしては、次に示す通り大きく3つあることが見えてきました。

    1. 経営者と従業員とのパイプ役になる
        -経営理念や価値観をメッセージとしてクリアにする
        -経営者との距離を近くして、経営者の考え方を共有する
        -経営理念や価値観を腹落ちさせる(従業員同士の)対話の機会を作る
    2. 管理職のマネジメント力を強化する
        -管理職を支援する(1 on 1の運用支援など)
        -管理職を教育する(褒めるスキルの研修など)
    3. 主体的に動こうとする従業員に(人事が)仕組みとしてのサポートを提供する
        -自分の価値を高めようとする行為に報いる(評価やインセンティブに新基準を設ける)
        -会社を居心地の良い場所にする(楽しいイベント企画や福利厚生の充実など)
            

    ただその一方で、参加者のディスカッションを見ていると、これらやるべきことを自社に引き寄せて考えた際、どうやったら上手く出来るかイメージが持てていない企業が多いように感じました。

    今回の座談会では、エンゲージメント3.0を実現する組織(≒ありたい組織の姿)に向けて、人事としてやるべきアクションプランまでを議論してきました。しかし、実際にはこれをどう実行していけばよいのでしょうか。次回の座談会ではこれを議論し、その現実解を参加者と共に探っていきたいと思います。

    勉強会レポート(総括)ダウンロード

    日立ソリューションズが主催した人事勉強会のセミナーレポート
    を総括版として資料にまとめました。