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人事労務管理コラム

ホワイトカラー・エグゼンプション

ホワイトカラー・エグゼンプションが人事・労務管理に与える影響

2015年2月13日、厚生労働省の労働政策審議会で、「高度プロフェッショナル労働制」の創設を盛り込んだ報告書を取りまとめ、建議しました。高度プロフェッショナル労働制とは、働いた時間に関係なく、成果によって賃金が決まるという制度のことです。「金融ディーラー」「アナリスト」「コンサルタント」などの特定の職種で、年収1,075万円以上の労働者が対象となります。実は、これは前安倍政権時代に検討されていた、一般に「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ばれるものです。

  • 週5日、40時間の労働時間の規制を外すこと
  • 労働時間ではなく成果に対して賃金を支払うこと
  • 労働生産性を高めること

この3点を目的とした制度は、早ければ2016年4月にも施行される可能性があります。
ホワイトカラーのサラリーマンに大きな影響を与える可能性のあるこの制度について、調査会社などの認知度調査の結果を見ると、詳しい内容を知っている人は2~3割程度しかいないため、今回こちらで紹介するとともに、この制度が成立した場合の人事・労務管理に与える影響についても触れたいと思います。

ホワイトカラー・エグゼンプションが人事・労務管理に与える影響

ホワイトカラー・エグゼンプションの概要

ホワイトカラー・エグゼンプションの概要については、厚生労働省の資料から引用して紹介します。
対象労働者、対象業務、適用条件は以下の通りです。

1. 対象労働者とは
使用者との間の書面による合意に基づき職務の範囲が明確に定められ、その職務の範囲内で労働する労働者であり、年収が、労働基準法第14条に基づく告示の内容(1,075万円)以上である労働者。なお、対象労働者については、職務記述書などに署名する形で職務の内容および制度の適用についての同意を必要とし、希望しない労働者には制度は適用されません。

2. 対象業務とは
「高度の専門的知識などを要する」または「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」業務で、具体的には金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場などの高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案または助言の業務)、研究開発業務などです。

3. 適用条件とは
本制度の適用労働者について、割増賃金支払のための労働時間を把握する必要はありませんが、健康確保の観点から、使用者は、健康管理時間(省令で定める「事業場内に所在していた時間」と「事業場外で業務に従事した労働時間」の合計)を把握したうえで、これに基づく健康・福祉確保措置を講じることが必要です。
具体的には、健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置として、以下のいずれかを労使委員会における5分の4以上の多数の決議で定めることが必要としています。

  • 3-1 労働者に24時間について継続した一定の時間以上の休息時間を与えること
  • 3-2 健康管理時間が1カ月について一定の時間をこえないこととすること
  • 3-3 4週間を通じ4日以上、かつ1年間を通じ104日以上の休日を与えること

(※参照:労働政策審議会建議「今後の労働時間法制等の在り方について」を公表します |報道発表資料|厚生労働省 )

ホワイトカラー・エグゼンプション対象者の拡大の可能性

ホワイトカラー・エグゼンプションの概要について述べましたが、対象労働者の年収や対象業務は、法案成立後に省令で規定すること、労使委員会において対象労働者を決議するに当たっては、本制度の対象となることによって賃金が減らないよう、法定指針に明記するのが適当と書かれています。

また、適用条件の3-1、3-2については、法案成立後に改めて審議会で検討のうえ、省令で規定することと書かれています。

さらに、重要なのに読み飛ばしてしまいそうですが、法令改正ではなく省令で年収制限や対象業務、および適用条件を変更しても良いことになっています。そのため、適用範囲が狭くて目的が達成できないという経営者側の声を受けて、適用範囲や適用条件が広がっていく可能性もあります。

もともと経団連が2005年に持ち出した素案では、「当該年における年収額が、700万円(または全労働者の給与所得の上位20%相当額以上)の労働者は、労使協定の締結あるいは労使委員会の決議のいずれかによって時間規制の適用除外とし、年収400万円以上700万円未満の労働者は、労使委員会の決議による場合に限り適用除外とする」となっており、年収400万円以上を対象にしたいという意図が伺えます。

ホワイトカラー・エグゼンプションが人事・労務管理に与える影響

国税庁の「民間給与実態統計調査(平成25年)」によると、年収1,000万円以上の割合は3.9%です。これには、ホワイトカラー・エグゼンプションの対象外の会社役員や管理職が大半含まれると考えられ、その面では制度作りは大変ですが、企業全体に与える影響は小さいと言えます。

しかし、経団連が望む年収400万円以上の年収の割合は41.5%で、将来的は半数に近い社員が対象になる可能性があります。金銭的な報酬が全てではないとは言え、残業代が付かなくなったときの業務に対するモチベーションの低下は避けられないでしょう。その意味でも、「報酬」「ポスト」「与える業務内容」「成果に対する評価」など、従来の年功序列の管理だけをしていた時代からは考えられない、社員に対して業務へのモチベーションを上げる対策が必要になります。

すでに多くの企業では、年功序列の廃止や成果主義、裁量労働制などのもとで人事・労務管理が行われていますが、今後は、対象者が拡大されることが考えられます。そのため、人事・労務管理に一層磨きをかけていかないと、ホワイトカラー・エグゼンプションの目的の一つである「労働生産性を高めること」の実現は難しいでしょう。企業として、それに備えていくべき時期が迫っています。

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