テーマ | 「2012年度に具体的に取り組む人事/労務プロジェクトとは」 ~新しい制度や施策の導入を成功させるために~ |
---|---|
日付 | 2012/03/15 |
参加者 | 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 5名 |
主催 | 株式会社日立ソリューションズ |
ファシリテーター | 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸 |
テーマ |
---|
「2012年度に具体的に取り組む人事/労務プロジェクトとは」 ~新しい制度や施策の導入を成功させるために~ |
日付 |
2012/03/15 |
参加者 |
人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 5名 |
主催 |
株式会社日立ソリューションズ |
ファシリテーター |
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸 |
2008年7月より開催している日立ソリューションズ主催の「ヒューマンキャピタル研究会」2011年度は、企業にイノベーションをもたらす "攻め"の人事/労務を目指し、全5回に渡り、勉強会を開催いたします。
2012年3月15日に開催した第5回の研究会では、「2012年度に具体的に取り組む人事/労務プロジェクトとは」をテーマに、議論しました。 その模様を本レポートにてお伝えいたします。
人事制度の刷新やなんらかの新しい人事施策の企画・施行は、会社をあげた一大プロジェクトと言える。 それらのプロジェクトを進める際には、経営方針や経営目標に合わせながら、 人事/労務は、プロジェクトを進めるリソースの調達・配分計画も立てて臨まなければならない。
こういった人事の動きをシステム部門の仕事に置き換えると、新制度/新施策の企画から施行までの「開発業務」と、 制度を運用していく傍ら様々なサービスデスク対応をする、日々の「運用業務」の2つに分類して考えられる。
しかし、開発業務にあたる新制度の改革や評価制度・給与制度の見直しは頻繁に行われるわけではない。 数年かけて運用してきたものが、経営の方針や環境の変化に伴い、ズレが生じた頃に刷新するため、 数年に一度のビッグプロジェクトとなる。
一方、運用業務では、限られたリソースで日々制度を運用していかなければならない。運用を通して、 課題やネックが生じることは多々あることだか、それらすべてを一挙に解決することはできない。 取り組むべき課題に優先順位をつけ、リソースの調達や配分をバランスよく考える必要がある。
研究会では、2012年度に取り組む人事/労務の重点施策について議論した。
その中で、2012年度どのようなことに取り組もうと検討しているのか、またどのような判断基準で優先順位を決めているのか、 参加企業に尋ねたところ、ある企業では、「確実に実績が出るもの」という基準で、「ワークスタイルの多様化に伴う就業制度の変更」、 「処遇・評価制度の刷新」「労働生産性向上のための施策」の3つに取り組むべき施策を絞っていた。
またある企業では、経営戦略に沿った人財ポートフォリオを策定していきたいと話していた。 会社全体の事業の方向性や戦略に基づいて、どのような人財が必要で、彼らをどう処遇・評価するのかの大方針をつくろうとしており、 まず、社内にどんなスキルを持った人財がどのくらいいるのか、面談などを通じて把握し、データベースを作成し、 それを踏まえたうえで、人財ポートフォリオへマッピングしていこうとしていた。
このように各社が様々な判断基準で、取り組むべき人事/労務施策の優先順位を判断していたが、 プロジェクトマネジメントの視点で優先順位を決め、実行の計画を立てている企業はなかった。
その結果として、取り組み施策の中に、必ず成果物を残すものと、そうでないものが混在していることが 多いように感じられた。つまり、新制度導入などの明確な成果物のある取り組みは期限を切ったプロジェクト的に 進められるが、それ以外の施策は、明確なゴールが描かれないまま、継続的懸案事項として毎年テーブルに 挙がっている状態。言い方を変えれば何年もたな晒しにされた状態に近い施策も少なからずあるようであった。
では、人事/労務リーダーがプロジェクトマネージャのようなポジションで人事施策を進めていく場合、 どのようなことに注力する必要があるだろうか。議論していく中で、「リソース配分」「進捗の管理」 「関係者の巻き込み」の3点が浮かび上がってきた。
「リソース配分」では前述したように、限りあるリソースをどのように配分するのか、 着手するタイミングも必要だ。「進捗の管理」では、たとえば合併した2つの会社の制度を統一する、 制度を刷新するなどゴールが明確であれば、進捗具合は明確だが、継続的に取り組んでいる施策については ゴール自体が明確ではないケースが多い。
たとえば、モチベーションを改善する、といった定性的な目標に対しては、まずは具体的にゴールを設定し、 そこに至るためのマイルストーンを設定することで、任意のタイミングでの進捗管理が可能であろう。
そしてもう一つ、「関係者の巻き込み」については、制度などを施行・定着させるうえで重要なポイントになる。
ある企業では、新しい人事制度の施行を定着させるために、あえて反対派を設計段階から巻き込んでいるという。 制度施行後、ボトルネックになりそうな人物を先に囲い込む作戦だ。一方、別の企業では、反対派を巻き込むの ではなく、うまくいった成果を披露することで取締役などのトップ層を巻き込み、トップダウンで新しい施策を 社員に納得させる工夫をしている。
一方、プロジェクトを企画するうえで重要になるのはKPIの設定ではないだろうか。
開発プロジェクトは、何らかの経営目標を達成するためにある。
たとえば、グローバルでの事業拡大という経営目標があった場合、経営目標達成の指標として、 「海外売上比率を20XX年までに2倍にする」などと具体的なKPIが設定される。
経営目標から人事マターの重要成功要因が「グローバル人財の強化」と言った形でブレイクダウンされると今度は、 グローバル人財が強化された指標として、「グローバル人財要件を満たす人財を何人育成する」などのKPIが設定され、 そのための制度導入や人財情報データベース作成、教育研修実施といったプロジェクトにそれぞれKPIが設定される。
このようなKPIの概念というものは、今の人事/労務にはまだあまりないようだ。人事/労務が施策のKPIで評価されること への懸念が少なからずあった。
KPI設定の目的は人事/労務の評価ではない。KPIの設定はあくまで経営目標など業績に繋げるための1つの手段と捉えるべきだ。
ただ、人事/労務上のあらゆる施策が経営方針に沿っているものであるとすれば、最終的に経営目標とリンクするKPIの設定 という概念を人事施策に取り入れるのは不可欠なことではないだろうか。
これからの人事/労務リーダーに求められるのは、そのKPIを自ら設定する意識と能力であるとも考えられる。
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)
日立ソリューションズが主催した人事勉強会のセミナーレポート
を総括版として資料にまとめました。