テーマ | 人財価値とスキル定義 「人財に必要なスキルをいかに定義し、育成・評価していくか」 |
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日付 | 2010/09/16 |
参加者 | 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 8名 |
主催 | 株式会社日立ソリューションズ |
ファシリテーター | 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸 |
テーマ |
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人財価値とスキル定義 「人財に必要なスキルをいかに定義し、育成・評価していくか」 |
日付 |
2010/09/16 |
参加者 |
人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 8名 |
主催 |
株式会社日立ソリューションズ |
ファシリテーター |
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸 |
日立ソリューションズでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、人事/労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を、2008年7月より、定期的に開催しております。
2010年度のヒューマンキャピタル研究会では、「人財価値(パフォーマンス)を最大化するための人事/労務ミッションとは」をキーフレーズとして、さまざまなテーマで議論をしてまいります。
9月16日に開催した研究会では、「人財に必要なスキルをいかに定義し、育成・評価していくか」について議論しました。その模様を本レポートにてお伝えいたします。
必要となるスキルを明確に客観的に定義し、その定義に沿って、人材を評価し、育成していくことで、計画的な人材の調達・配置が可能となる。多くの企業では既になんらかのスキル定義を行なっている。しかし、ビジネスや企業のビジョンが変化すれば、人材に求められる能力・スキルも変わってくるだろう。また、より体系的に人材育成をしていくために、スキル定義の明確化、客観化が必要になる。
企業の人材に求められる職能・スキルには、大きく分けて、全職種に共通の職能・スキルと、職種ごとに求められるスキルがある。職種には、技術職のように、求められる技能の領域やレベルが比較的明確な職種もあれば、営業職のように、求められる技能領域やレベルが不明確な職種がある【図1】。
技術職などのスキル定義については、たとえば、経済産業省が定義したITSS(ITスキル標準)など、既存の標準を雛形にしながら、レベル定義を行なうという方法がある。ITSSとは、IT企業の人材に共通して必要となるスキルを定義したスキル標準である。「セールス」「ITアーキテクト」など11の職種を、さらに35の専門分野に分け、それぞれの分野に必要となるスキルを、1~7のレベルに応じて定めている。IT企業全体に共通するスキル標準に準拠することで、自社の人材の位置を客観的に、そしてより明確に把握することができるというメリットがある。しかし、ITSSの導入については、様々な課題も指摘された。
必要となる技術領域が比較的明確な技術職に対し、営業等の職種に必要なスキルを定義することは難しい。営業の場合、「スキルと業績が相関しないことも多い」(研究会参加企業)だけに、報奨としての賞与査定を業績のみで評価することに問題はないが、登用を業績だけで評価すれば、スキルとの不釣り合いを生んでしまうことがある。
スキル定義が難しい職種は、職務分析によって、その職種に必要なスキルとは何かを、たな卸しする必要がある。
研究会に参加していたある企業では、直接、複数の営業職にヒアリングし、その業務を書き出していた。「業務の内容を本人が明確に意識していないことも多いため、人事がヒアリングをし、業務たな卸しをする」(研究会参加企業)。複数の営業に対しヒアリングすることで、共通の項目となっている価値創造的な業務を括りだし、そこから必要となる能力を明らかにしていったという。この企業では能力を大きく「知識」と「スキル」に分けて定義していた。「「知識」とは「~がわかる」で定義できるものであり、「スキル」とは「~ができる」で定義できるものだ」。そして、業務の各レベルで必要となる能力を定義していた。
同様に営業職において高い業績を実現するために必要なコンピテンシーを明らかにし、これを各レベルの定義に組み込むことで、業績と能力の相関を担保している企業もあった。
営業職だけではない。経営者や管理職といった「コア人材のスキル定義」も、必要となるスキルが不定形だ。また、そもそもスキルの前に「コア人材」を定義しなければならない。
研究会に参加していたある企業では、昇進時の上司の推薦状をデータ化する試みを検討していた。「上司からの推薦状の中に、その人材にどのような能力があるか、どのような点を伸ばせば成長するのかを書いてもらっている。そうした文書を蓄積し、これを集めて統計的に処理していくことで、『実際にこのような特質を持った人材が幹部になっている』という傾向が分析できるのではないか。これをベースにスキルを定義し、評価することは可能だと考えている」(研究会参加企業)。
また、別の企業では、管理職就任前に、外部企業による、個人のマネジメント能力を評価する研修を必ず受講させているという。「そのデータが10年以上蓄積されているので、これを活用し、若い頃にどのような業務を経験させるべきか、どのような企画を経験させるべきかを把握できる可能性がある」とこの企業は述べている。
職種ごとに等級を定義した場合、職種異動により、積み上げたスキル評価がリセットされてしまうという問題も研究会では指摘された。こうした異動に対しては、一定の育成期間を設けることで対応している企業が多いようだ。「育成機関を経過した後にもう一度審査をし、その段階で等級を決めることにしている」(研究会参加企業)とのことであった。
スキル定義を評価に結びつけている例もあるが、スキル定義のもっとも大きな目的は戦略的な育成だ。
スキル定義を直接育成に結びつける方法として多くの企業が採用しているのが、目標管理マネジマントだ。年に2回程度個別に面談を実施して、現在のスキルの把握、目標とするスキルレベル、そのレベルに達するために必要なことを上司とすり合わせし、スキル向上のプランを共有する。
先に紹介した、自身のスキル変化をグラフィック化している企業では、各スキル項目の現状を棒グラフで、目標数値を折線グラフで表示し、目標と各年の到達点が一目でわかるようにするシステムをつくっていた。この企業では、出力したグラフを元に、今後どの能力を高めていくかを上司がコメントしたり、先に目標を達成し、レベル4に達した先輩社員を紹介し、先輩社員と直接対話することができるようにしたりすることで、社員のスキル向上意欲を高めていた。また、各社員のめざすスキルレベルに合わせて、人材育成担当者が、研修やOFF-JTの情報を、個別にメールで送信する取り組みも行なっていた。言ってみれば、研修コンシェルジェだ。
仕事のパフォーマンスを高めるためには、高いスキルが必要だ。高いスキルを育成するためには、それがどのようなスキルなのか定義する必要がある。そして、能力・スキルに応じて、活躍の場が与えられるべきである。
スキル定義は、企業にとって人財価値を高めるために必要であり、個々の人材にとっても、自身のキャリアを開発していくために必要なことであろう。
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)
日立ソリューションズが主催した人事勉強会のセミナーレポート
を総括版として資料にまとめました。