テーマ | 適正な評価がもたらす人財価値の向上 「公平でパフォーマンス向上を促す評価制度と人事考課とは」 |
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日付 | 2010/06/09 |
参加者 | 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 8名 |
主催 | 株式会社日立ソリューションズ |
ファシリテーター | 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸 |
テーマ |
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適正な評価がもたらす人財価値の向上 「公平でパフォーマンス向上を促す評価制度と人事考課とは」 |
日付 |
2010/06/09 |
参加者 |
人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 8名 |
主催 |
株式会社日立ソリューションズ |
ファシリテーター |
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸 |
日立ソリューションズでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、人事/労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を、2008年7月より、定期的に開催しております。
2010年度のヒューマンキャピタル研究会では、「人財価値(パフォーマンス)を最大化するための人事/労務ミッションとは」をキーフレーズとして、さまざまなテーマで議論をしてまいります。
6月9日に開催した研究会では、評価・処遇制度と、制度にもとづく人事考課を整備することによって、いかに従業員の公平感を醸成し、パフォーマンスを向上させるかについて議論しました。その模様を本レポートにてお伝えいたします。
企業にとって、従業員を公正に評価し、処遇していくことは、従業員に公平感を与え、パフォーマンスを向上していくうえで、人事・労務上の重要なミッションと言える。
「公平でパフォーマンス向上を促す評価・処遇」と考えた場合、【図1】に示すように、まずは公平な枠組みや評価軸を定めた制度の設計がベースとなり、それを運用していくための共 通のしくみがある。そのうえで、制度やしくみにもとづいて管理者が適正に人事考課できるための考課の質が必要となる。さらに、評価制度以外で、公平感やモチベーションを促す補完策がバランスを補う役割を果たす。
これが総合的に作用することで、従業員のパフォーマンスが向上すると考えられる。
今回の研究会では、この考え方にもとづき、
業績によって報奨を与え、能力によって処遇することが、企業の評価・処遇制度の本来のあり方だと言える。
日本企業の評価・処遇制度は、一般的な流れとしては、年次によって職能等級が上がっていく年功序列型から、業績によって処遇する成果主義型へと変わってきたと言える。
つまり、能力は業績に比例するという考え方で、能力評価が業績評価へと実質的に包含される評価の仕組みに変わっていった。
しかし、今回の研究会の議論を通して、評価・処遇制度において、能力の評価が再び重要視されてきていることを感じた。
研究会では、職種別、職務別に必要とされる能力やコンピテンシーを定義し、能力の評価を人事評価の対象にしようとする取組みや、「行動意識評価」ということで、業績を上げるための行動を評価する仕組み、また、結果としての業績だけでなくプロセスを評価する仕組みを取り入れている参加企業があった。
つまり、結果としての業績だけではなく、業績を生み出すための能力部分を別に評価しようという考え方だ。
実際の運用の仕方は、目標管理制度に近い。本研究会でも、目標管理制度を導入している企業が多かった。
目標管理制度は、定性的な業績の評価のしくみと言える。営業における売上数字など、定量化しやすい業績とは別に、定性的な業績を評価するために任意で目標と達成基準を設定する。
実は、目標管理制度で目標とされる項目には、「部下育成」や「影響力」、「会社への貢献」など、能力評価の対象と定義の似たものが多い。目標管理制度が、業績偏重の中で、実質的に能力部分の評価として機能していたと言える。
しかし、目標管理制度の場合、目標項目や求められる基準が、ガイドラインはあるものの、各現場で任意なため、評価水準を全社で共通化することが難しい。
今、各社が新たな取組みを始めているのは、能力評価の基準をあらかじめ明確に定め、それに従って目標管理的なマネジメントで評価をしていく体制だ。
IT系の参加企業の中には、ITSS(ITスキル標準)を取り入れて、自社独自の能力評価制度を構築している企業もあった。IT業界で技術者のスキル評価に使われるITSSは、職種や職務で求められる実践的な能力を明確に定義し、診断ツールなどで客観的な評価をするが、スキル育成において、目標管理制度を使った運用がされることが多い。
目標管理制度の課題の一つでもあるが、いかに適正な評価基準・評価制度があっても、実際に評価を下すのは管理者の仕事だ。管理者の考課スキルによって適正な評価かどうかが分かれることが課題となる。
適正な考課のために重要な施策を問うと、参加者全員が「評価結果のフィードバック」を挙げていた。
各従業員に評価結果を管理者が直接フィードバックすることは当然のことだ。どの企業でも、それが徹底されている。ただ、中身までが問われているかというと別問題だ。
フィードバックの有無を明確に把握していないケースも中にはあった。また、ほとんどの企業はフィードバックの有無は報告させているが、フィードバックの内容までを報告させているケースは決して多くなかった。
従業員にとっては、評価の結果に主観的に納得できるかどうかが重要である。客観的に見て公平ではなくても、従業員自身が納得できれば、高いパフォーマンスを引き出すこともできる。そういう意味でも、評価結果そのものよりも、フィードバックの納得性が重要な場合がある。
当然、適正な考課のために考課者訓練を実施している企業も多い。演習の中で考課者によるバラツキをなくすために必要なスキルを学ぶが、考課者訓練でフィードバックのロールプレイングも多く取り入れられている。これは極めて重要な視点と言える。
考課者によるバラツキをなくすという意味では、各管理者がどのような考課をしたかを管理者間で共有する取組みも紹介された。いわゆる査定の持ち点の取り合いをする調整会議ではなく、各管理者がどのような基準でどう評価したかを共有し、評価のバラツキを調整する会議を持っている企業もあった。
適正に設計された制度が適正に運用されることが、「公平でパフォーマンス向上を促す」ためには基本になるが、従業員の目線に立った場合、それだけではない。
「自分が評価されている」、「自分が認められている」という実感を持てることが、特にパフォーマンス向上には重要だ。そのための、さまざまな補完策がある。研究会でもさまざまな取組みが紹介された。
直接数字に表れないが、優れた取組みをしている個人やチームを全社のイベントで表彰する制度や、資格取得支援・留学など、学習の機会をインセンティブとして提供している例もあった。
また、社員に自分のキャリアのロードマップを描かせ、それを今後の育成の材料やジョブアサインの材料にして、従業員が自ら描いたキャリアパスを支援している企業もあった。
公平なだけでなく、最終的にパフォーマンスを向上させることが、評価・処遇の仕組みの重要な点だ。評価・処遇における完璧な制度というものはない。制度設計から運用の工夫、補完策など、すべてが機能することが、「公平でパフォーマンス向上を促す」ために重要なことであろう。
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)
日立ソリューションズが主催した人事勉強会のセミナーレポート
を総括版として資料にまとめました。