日付 | 2014/11/19 |
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参加者 | 製造業を中心とした企業のITリーダーおよびメディア関係者 計7名 |
主催 | 株式会社日立ソリューションズ |
ファシリテーター | 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸 |
日付 |
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2015/11/18 |
参加者 |
製造業を中心とした企業のITリーダーおよびメディア関係者 計7名 |
主催 |
株式会社日立ソリューションズ |
ファシリテーター |
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸 |
「IT部門の次世代リーダー育成」を議論するにあたって、ワークショップ参加者に、まずは次世代に向けてIT部門の役割がどう変化すべきかを聞いた。そこで出てきたキーワードは、以下のようなものだ。
今回ワークショップに参加した企業の人財DB導入の目的で共通するのは「適正な人財配置」であったが、その配置の考え方は各社で異なり、大きく分けると以下の3つとなる
そして、このような役割を果たすためのIT部門の次世代リーダーに必要な能力要件を聞いた。
それが、図1のグラフだ。
上記のグラフから読み取る次世代のITリーダー像は、『イノベーションのスペシャリスト』と言える。
業務プロセスにおける社内コンサルタント機能、競争優位をもたらし、事業を直接支援する機能が次世代のIT部門のメインの役割となれば、当然そのような要素が次世代のITリーダーには求められるだろう。
企業におけるITの役割は業種によっても異なる。金融や流通業では、ITは事業そのものであり、「事業化を支援するIT」、「競争優位を先導するIT」という要素は恒常的に求められている役割だ。
一方、製造業は業務プロセス支援の要素が強く、「事業化を支援するIT」、「競争優位を先導するIT」は未開発の分野と言っていい。今回は製造業の参加者が多く、そのため、既存の人材モデルの延長ではなく、まったく新しい人材モデルであるイノベーターを、次世代リーダーとして育成しようと考えていた。
しかし、それは容易なことではない。そもそもそのような人材をIT部門で育成してきていない。それでは、他部門から引っ張ってくればいいのかというと、そうでもない。そもそも企業全体の中にイノベーターと言える人材があまりいないのが現状だ。
ある企業では「競争優位を先導するIT部門」というキーワードが経営から出ており、業務部門とIT部門が一体となってイノベーティブなしくみを生み出すことが期待されているが、IT部門に夢物語みたいなムチャブリの相談をしてくるほどのユーザー部門担当者はおらず、ユーザー部門から出てくる要望は、IT部門にとって「ありがたい」と思えるほどの非常に現実的なものばかりとなっている。
そのように、企業全体でイノベーターが不在の中で、もっともそこに遠いと思われるIT部門から、次世代リーダーとしてのイノベーターを育成するにはどうすれば良いのか。
イノベーターの条件として、ITとビジネス両方の知識・スキルが必要なことは基本となるだろう。そう考えると、IT部門と業務部門とのローテーションは、必須の育成方法となるが、ここで重要なことが「エース級の人材交流」を徹底することだ。ここ最近、多くの企業で、IT部門と業務部門の人材交流が盛んになってきたが、対象はどちらかというと、「どちらの部門でも持て余している人材」が中心だ。
「IT部門で今一つ使えない人材が、業務部門でIT便利屋となって居場所を見つける」、「業務部門で今一つ使えない人材が、IT部門で業務部門との橋渡し役になるが、いつまでもプロジェクトリーダー未満」といった具合だ。
大きな全社プロジェクト発動時に一時期業務部門のエースがIT部門に異動してくることがあるが、多くはプロジェクト終了後に業務部門に帰ってしまう。そのままIT部門に残る人材は、エース級ではない人材の方だ。そのような人材同士を交流させていても、イノベーターは生まれない。
イノベーターには、ビジネスとITの両方の要素が必要だが、それは所謂ゼネラリストという意味ではない。両方の素養を十分に持ち合わせていながらも、いずれかにエッジを利かせた人材が、異なるカルチャーと交わることで化学反応を起こすことで初めて生まれる。
だから、エース級の人材交流でなくては意味がないのだ。
イノベーションとは新しいことへの挑戦でもある。新しいことへの挑戦はリスクが伴う。当然失敗もある。イノベーターは失敗の中から学んでいく。
IT部門というのは、もともと失敗できない部署だ。それが高じてどんどん保守的になり、業務部門から「抵抗勢力」とさえ見られるようになってしまう。
IT部門から本気でイノベーターを育てないのなら、失敗が許される風土を作ることが必要だ。もちろん基幹となるシステムの運用や、重要なシステムの開発プロジェクトで、キーとなる役割での失敗は許されない。
したがって、育成対象者には少し背伸びした役割を与えると同時に、プロジェクト品質を担保するサポート役を配置するという具合に、プロジェクトへの要員配置を、余裕を持たせたものにする。あるいは、プロジェクトに発展する前の段階で、業務部門とあれこれ議論しながらいろんなことをトライアルできるタスクフォースに取り組ませるなど、「失敗が許される仕事」の経験を与えるようにしなければならない
エース級の人材交流、余裕を持たせたプロジェクト要員配置、プロジェクト以外のタスクフォースへの取り組み。これら前述した取り組みは、すべて「余裕」がないとできない。
限られた人数で、予算も時間も人員配置もギリギリではじっくりと腰を落ち着けた人材育成などできない。
次世代リーダー育成とは、中長期の人材投資なのだ。だから、IT部門長は、経営に対して人材投資への理解を訴えなければならない。
このときに重要なのが、IT部門への人材投資、ひいてはIT部門の変革が経営にどのような価値をもたらすのか、きちんとROIを示すことだ。そうしなければ経営はIT部門の人材投資に積極的になれない。
当然この行為は、IT部門長にとって大きなリスクを伴う賭けだ。しかし、IT部門の変革がずっと叫ばれながらいっこうに変わらない一番の要因は、IT部門長の覚悟のなさにあると思っている。IT部門長が、腹をくくって経営に人材投資を訴えることをしなければ、いつまでたっても次世代リーダーは育たないだろう。
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)
日立ソリューションズが主催した人事勉強会のセミナーレポート
を総括版として資料にまとめました。