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セミナーレポート

「ヒューマンキャピタル研究会2012」
~HRイノベーターへの変革~ 第2回

テーマ どうすればタレントマネジメントできるのか
「人財情報の見える化を実現する具体的なステップを考える」
日付 2012/08/30
参加者 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 9社
主催 株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
テーマ
どうすればタレントマネジメントできるのか
「人財情報の見える化を実現する具体的なステップを考える」
日付
2012/08/30
参加者
人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 9社
主催
株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸

「見える化」は本当に企業価値を高めるのか
人財情報データベースを、使われないBIツールと同じにしないために

2008年7月より開催している日立ソリューションズ主催の「ヒューマンキャピタル研究会」2012年度は、「HRイノベーターへの変革」をキーワードに全5回に渡り開催しております。
2012年8月30日に開催した第2回の研究会では、人財情報の見える化、タレントマネジメントについて議論しました。その模様を本レポートにてお伝えいたします。

「人財情報の見える化」はゴールではない

ヒト、モノ、カネという経営資源の中でも、もっとも重要と言える『人財』という経営資源を最適化することは、企業価値を高めることに直結する。以前から、「人財情報の見える化」という概念は語られてきたが、特に最近は、 企業のグローバル化など、そのスコープが広がり、より一層見える化のへの期待が高まっている。

ここで見える化の対象としているのは、人事台帳で管理される人事の基本情報だけではなく、業務履歴、スキル、人事考課、パーソナリティ、本人の志向など、従業員のタレント属性を把握する情報とされ、見える化された情報の 活用目的を総称して、「タレントマネジメント」と呼ぶことが多くなっている。

個々のタレント属性に応じて、人財を適正に配置し、もっとも有効な育成策を打つ。概念としてはわかりやすいが、具体的にどのように実践していくのか、活用シーンが今一つ見えてこない。実際に、「人財情報の見える化」は 実現しているものの、有効な活用ができていないとする企業は多い。

基幹業務システムにおけるBIも同様だが、経営に関わるデータが見える化された状態で終わっている企業は多い。 本来は、見える化された経営データをもとになんらかの意思決定、アクションを起こすことで初めて企業価値に結びつくのだが、「なるほど」と自社の経営状態が見えた状態だけで満足し、結局ムダな投資であったと後から気づくケースも多い。

「人財情報の見える化」についても同じ懸念がある。特に、グローバル人財強化、タレントマネジメントと言った言葉がもてはやされ、企業経営者が浮足立っている昨今、過大な労力をかけて、使われない人財データベースが構築されていく例が増えていくことが予想される。

そうならないために、今回の研究会の議論では、「人財情報の見える化」をどう実現するか、という段階から一歩踏み込んで、「人財情報の見える化」が実現した暁に、どのように活用していくのか、具体的な活用シーンを考えた場合に、どのような見える化が重要であり、現実的なのかを、掘り下げていくべきだ。

「人財情報の見える化」を考える際のステップ

「人財情報の見える化」は、手段として最終的には人財情報データベースをつくることになるだろう。 「人財情報の見える化」を、人財情報データベース作成のプロジェクトとしてとらえた場合、次のステップで考えることが重要だ。【図1】

  • ① どんな目的で活用するのか
  • ② 誰が主に活用するのか
  • ③ 具体的にどのように活用するのか
  • ④ その活用を実現するためには、どんな情報が必要か
  • ⑤ その情報をどうやって集めるのか

まず、一番重要なのが「目的」である。どのような目的で活用するのかによって、活用の主体と必要な情報も異なってくる。

2011年11月に、同じテーマで議論をした際に、人財情報データベースの活用目的として、以下のような項目が挙がっていた。【図2】

これらの目的によって、活用する主体も変わってくる。そして、誰がどのような目的で活用したいかによって、活用する情報も変わる。 誰が、どんな目的で、どう活用するのか、その時に必要な情報は何か、これらを紐付けて考えたものが、人財情報データベースの要件になる。

人財情報を見える化する目的は何か

BIの場合も同じであるが、どんな目的で活用したいかを社内で議論すると、さまざまな目的が挙げられ、そのすべてが重要であるとされて、見える化データベースの要件はどんどんと膨らんでいく。そしてデータベース構築に膨大な労力と時間がかかり、 結局いずれの要望も不完全な状態でしか満たせないものになってしまう。

人財情報データベースはもっと複雑だ。これまでの業務プロセスの中で生のデータが蓄積されているものは少なく、多くが新たな入力を必要とする。それだけに、データベースの要件を複雑にすると、いつまでたっても使えるデータベースは完成しない。

従って、活用目的をもっとも重要なものに絞り込んでいく必要がある。今回の研究会では、人財情報データベースの構築に取り組んでいる企業に対して、活用目的が明確になっているかを聞いた。【図4】

ここでもっとも多い回答は、「優先順位が明確になっていない」というものであった。 無目的に人財情報データベースの構築に取り組んでいるわけではないが、さまざまな活用目的に対して、まずは「見える化」するが最初のステップのゴールであり、その後の活用の仕方の詳細までは詰め切れていない、というのが正直のようだ。

見える化された人財情報をどう活用するか

アンケートでは、つけ加えて、人財情報データベースの活用目的として、もっとも有効に機能すると思われるものは何かを聞いている。【図5】

ここでもっとも多いのは、「従業員個人のキャリア開発」であった。【図2】の結果ともリンクしている。「人財のポートフォリオを明確にして戦略的な人財育成を行う」という回答も多い。

これらに共通しているのは、人財情報データベースによって、人財マップをスキル、資質面で明確にすることそのものが、目的に近いということだ。

「人財の適正配置・アサイン」については、日常の人事イベントで機能するかどうかが問われる。「人財の適正配置・アサイン」を、マネジメント層とすべての人財に分けると、マネジメント層の適正配置はポイントが下がった。

研究会参加者の多くが、プロジェクト単位での人財の適正配置を想定していた。プロジェクト単位の場合、なにより人財の発掘が重要となり、組織を横断した人財の見える化が有効に機能する。

一方、マネジメント層における部門を横断した異動では、企業規模にもよるが、既にある程度見える化しているので、改めて見える化することによる恩恵は少ない。最適に配置するためには、組織や評価の問題など、他の要因が重要になってくる。

ただ、現状の発掘の仕方では、登用される人財が固定されてくる懸念がある。見える化によって、これまでとは異なる評価の仕方で人財を発掘し、登用することができれば、マネジメント層全体の強化につながる。しかし、このためには、マネジメント層を適正に評価する指標と正しい評価が必要だ。

活用のために人事のしくみをどう変えるのか

「活用」というと、人財情報データベースをシステムとしていかに活用するかに関心が集まるが、人事マターとしては、想定した活用を実現するために、人事のしくみを変える必要があるのか、その場合、どのようにしくみを変えていくのかを考えなければならない。

たとえば、グローバルで人財を適正配置したいと言った場合に、各現地法人で勤務地域を限定して採用している場合などは、雇用契約そのものを変えていかなければならない。

グローバルでの人財の配置をめざし、グローバルでジョブ・ディスクリプションを共通化しようとする企業も多いが、実際にはなかなか難しい。

グローバルでの共通化を困難にするものには、さまざまな要因がある。研究会に参加するある企業では、技術職について共通の指標で評価していこうとしているが、海外の技術者には機密管理上、すべての技術情報を開示できないため、同じ役割の技術職であって、求められる技能が異なってくるということが生じている。

また、適正配置というのも誰の視点かによって異なる。人財の見える化が実現すれば、事業部トップが自部門で獲得すべき優秀な人財を発掘しやすくなる。一方で、全社最適での人財配置をめざした場合、事業部の意向よりも全社にとっての利益を優先した人財配置が必要になる。人事の権限を誰がどこまで持つのか、人事異動のしくみを大きく変えていかなければならない。

ある企業では、役員以上で構成する全社的な人事の審議会を設けており、各事業部が考える後継者育成プランを吟味している。事業部の中で考えられる後継者候補と育成のプランは事業部視点になっている。全社の視点で見た、後継者育成として必要な キャリアは時として事業部の意向に反することがある、そんな場合は、審議会が全社の利益を尊重した人事配置を実行する調整役を担うのだ。

このように、見える化された人財情報を活用しようとする場合に、どのような人事のしくみの変化が必要なのか、事前に想定し、制度の設計や変更に取り組むことが人事/労務の仕事になる。

「人財情報の見える化」は、人事/労務にとって、人財情報データベース作成プロジェクトと、それに伴う人事のしくみの変更という2つのプロジェクトのリーダー役が求められるのである。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)

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