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セミナーレポート

人事/労務管理リーダーのための
「ヒューマンキャピタル研究会」第16回

テーマ 人財価値と人財ポートフォリオ
「人財の定着・維持と代謝の施策を考える」
日付 2011/01/21
参加者 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 4名
主催 株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
テーマ
人財価値と人財ポートフォリオ
「人財の定着・維持と代謝の施策を考える」
日付
2011/01/21
参加者
人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 4名
主催
株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸

日立ソリューションズでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、人事/労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を、2008年7月より、定期的に開催しております。

2010年度のヒューマンキャピタル研究会では、「人財価値(パフォーマンス)を最大化するための人事/労務ミッションとは」をキーフレーズとして、さまざまなテーマで議論をしてまいります。

01月21日に開催した研究会では、「人財の定着・維持と代謝の施策」について議論しました。その模様を本レポートにてお伝えいたします。

あるべき人財ポートフォリオ

過去の研究会で「人財価値とスキル定義」をテーマに議論した際に、企業の人財バランスにおける「2:6:2の分布」なるキーワードが上がった。20%のハイパフォーマーと20%の能力を十分に発揮出来ていない人、そして60%の中間層で人財が構成されているという考え方だ。

これは、人財を、能力レベルという一つの軸で見た場合の考え方だ。一方、本研究会で何度も議論されたように、人財の多様化が進んでいる。今回、「人財の定着・維持と代謝の施策」というデリケートな問題を議論するにあたって、人財バランスを一つの軸で見るのではなく、様々な役割やスキルで人財を定義し、最適なバランスを考えた、あるべき人財ポートフォリオというべきものが根底にあるのかを、参加者に問いかけた。

研究会参加企業にアンケートで伺ったところ、図1のような結果であった。

アンケートの回答では「あるべき人財ポートフォリオがあるものの、理想的な人財バランスになっておらず、戦略的に取り組めていない」への回答が多かったのだが、実際に話を聞いていると、現状の姿をポートフォリオ化したものはあるが、あるべき姿までは描けていないようであった。

また今回の研究会参加企業は、ITサービスソリューションを提供している企業が多かったため、ITスキル標準(以下、ITSS)を活用して、人財モデルの定義を行い、それにもとづいて人財ポートフォリオを描いている企業がほとんどであった。

ある企業では、ITSSにもとづいて現状の人財ポートフォリオを明確にしたうえで、自己申告による成長目標をもとに、あるべき人財ポートフォリオを描いていた。ただ、これはあくまで従業員の視点で描く成長目標としての人財ポートフォリオであり、必ずしも経営の方向性に沿ったものとは言えない。

その中で、IT系のある参加企業は、経営方針に照らし合わせた人財ポートフォリオを詳細に設定していた。ITSSにもとづいて人財モデルを定義し、どのプロジェクトにどのような役割・スキルの人財を何人配置すべきか、プロジェクトごとの人財配置モデルも定義していた。

そして、経営の方針に照らし合わせて、事業計画上必要なプロジェクトの種類と量を算出し、それに見合う、あるべき人財ポートフォリオを設定している。あるべき人財ポートフォリオ実現のためには、人財をどう育成あるいは調達するのかを考えなければならない。それが、人事部のミッションとなる。まさに経営戦略に沿った人事戦略を実行する役割だ。

ただし、経営環境は刻々と変わる。環境の変化に合わせて、経営戦略も柔軟に変化することが求められる。人財ポートフォリオを要員計画として考えると、あるべき人財ポートフォリオも随時変化することになる。しかし、実際には、それに伴って目まぐるしく教育方針を見直すというわけにはいかない。

この企業では、経営方針に従って作成した人財ポートフォリオは、あくまで人財育成のゴールとKPIを明確にする目的のものと位置付けている。人財育成のゴールとKPIは曖昧になりがちだ。たとえ最初の根拠となった経営方針と多少乖離があったとしても、明確な根拠をもとに、人財育成のゴールとKPIを定義することは意義のあることだと思う。

いずれにしても、これからの人事/労務は、経営方針を根拠に、人財調達・育成・維持/定着の明確なゴールと戦略を描くべきであろう。

ミスマッチ解消は可能か

多様な人財を認め、あるべき人財ポートフォリオを描くうえで、会社が期待するパフォーマンスを発揮できない人財がやはり存在する。いわゆる能力を十分に発揮出来ていない人だ。どの企業も頭を悩ませているのが、能力を十分に発揮出来ていない人財の処遇と活性化策だ。

経営側の視点で見た場合、能力を十分に発揮出来ていない人財への対処は以下の順になるだろう。

  • 1. 職務・職場とのミスマッチを解消して高いパフォーマンスを発揮できる環境の提供
  • 2. 現状のパフォーマンスに相応した処遇を受け入れてもらう
  • 3. 社外への転出
当然のことながら、まずは、職務や環境を変えることで高いパフォーマンスを発揮してもらうことだ。実際に、能力のある人財が、上司や同僚との人間関係のもつれや、職務とのミスマッチが原因で高いパフォーマンスを発揮できない場合が多い。そんなとき、配置転換することで見違えるように高いパフォーマンスを発揮する例は、研究会参加企業のすべてが経験している。

だが、議論を進める中で、配置転換によるミスマッチ解消の成功例はあまり多くないことがわかった。それは、メンタルヘルス不調や職場上の大きなトラブルなど、問題が発生しない限り、ミスマッチが顕在化しないからだ。

企業組織の中では、潜在的なミスマッチが多数発生していると思われる。それぞれが見事にマッチングすれば、すべての人財のパフォーマンスはもっと向上するだろう。だが、人事部が全社員や職場の動向を把握することは難しく、社内で潜在的に発生している多数のミスマッチ全てを解消することは到底不可能だ。しかし、現在の人財を活かしながら、最適な人財バランスを目指すには、職務・職場とのミスマッチ解消に今後戦略的に取り組んでいく必要があるのではないだろうか。

研究会では、社内エントリー制度のようなものを導入している企業が数社あった。社内の部署の人財募集を社内で公開して行うものだ。基本的に誰でも応募できる。募集元の管理者が承認すれば、応募元の職場の上司の承認がなくても異動が成立する制度もあれば、両方の職場の管理者が承認しなければ異動が成立しないしくみなど、制度のあり方はさまざまであった。いずれにしても、自主的な形でミスマッチを解消する手段になり得る。

降格と社外転出の促進

配置転換などを行ってもパフォーマンスが上がらない場合がある。求められている責務に対して著しくパフォーマンスが低い、また、自身の以前のパフォーマンスと比べて著しく低下する場合は、就業規則上可能な範囲で降格や降給が行われる場合がある。

研究会に参加する各社においても、降格のしくみがあり、実際に降格の対象となる従業員が発生している。一旦、降格や降給が行われると、その後なかなか昇格や昇給の機会を失くしてしまい、さらに降格してしまう状況が見受けられるとのことだ。

そして、さらに状況が悪い人財については、社外への転出を促す結果となる。とは言っても、特定の従業員に対してアウトプレースメント・サービスを提供するといった、直接的な働きかけはごく限られたケースだ。余剰といえる人財の社外転出促進は、主に間接的な手段ということになる。代表的なものが早期定年制度だろう。一定の退職金を手にして比較的早期の定年を選択する制度だ。不況期だけではなく、このような制度を恒常的な制度としている企業もある。

一方、30代、40代を主な対象にして、自分のキャリアについて考えさせる研修を実施している企業もあった。このような研修では、優秀な人財が流出してしまうリスクもあるが、従業員に対して、自分自身でキャリアを考えさせるきっかけにはなっている。

積極的な社外キャリア支援

上記に挙げた能力を十分に発揮出来ていない人財に対する2と3の方策は、かなりネガティブな印象を受ける。

しかし、従業員の視点から見ると必ずしもそうとも言えないのではないだろうか。

メンタルヘルス不調で復職した従業員にとっては、元のパフォーマンスを要求されることが、大きなプレッシャーになる。いっそのこと、以前よりも低い処遇を受け入れて負担のない職務に就く方が幸せな場合もある。

社外への転出促進も、決して肩たたき的なネガティブなイメージではなく、社内で活かされなかった自身の可能性を、社外で見出すための有効的な支援と言える。

研究会に参加するある企業では、自身のキャリアについて相談できる窓口があり、社内での職場転身はもちろん、社外へ転職する際の支援も行っている。たとえば、専門学校でITインストラクター募集があれば、その求人を社内のイントラに載せるなど、社外求人への相談も受け付けている。その企業曰く、相談窓口やカウンセラーの存在はいわば、「キャリアのコンシェルジュ」であると。自身のキャリアについて相談できる場があることは、従業員にとって大変心強い。このようなコンシェルジュ機能が強化できれば、最適な人財ポートフォリオを描く際の糧になるかもしれない。

研究会では、アウトプレースメントを実際に活用している企業もあったが、オープンな制度ではなく、例外的な対策としてであった。だが、キャリアコンシュルジュという視点で考えると、アウトプレースメントでさえ、オープンな制度として活用する可能性もあるのではないだろうか。利用資格の認定が難しいが、積極的に社外でのキャリアを模索する従業員にとってはありがたい制度だ。自らのキャリアプランを立てる際、社内だけでなく、社外にも目を向けることで可能性が大いに広がる。

これらの社外キャリア支援策は、積極的な活用により、ネガティブな人の代謝と捉えるのではなく、産業界全体での人財の活性化に繋がるのではないだろうか。従業員のキャリア支援に積極的になることで、もっと効率的で戦略的な人財ポートフォリオ実現が近づくはずだ。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)

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