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セミナーレポート

人事/労務管理リーダーのための
「ヒューマンキャピタル研究会」第11回

テーマ 2010年度に取り組むべき人事/労務管理上の重点課題とは
~2010年度の課題と施策の具体的内容を明らかにする~
日付 2010/03/19
参加者 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 8名
主催 株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
テーマ
2010年度に取り組むべき人事/労務管理上の重点課題とは
~2010年度の課題と施策の具体的内容を明らかにする~
日付
2010/03/19
参加者
人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 8名
主催
株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸

日立ソリューションズでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、人事/労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を、2008年7月より、定期的に開催しております。

3月19日に開催した研究会では、「2010年度に取り組むべき人事/労務管理上の重点課題とは」をテーマに、限られた時間、資源の中、数多い課題の中から、特に今年度、各社で人事/労務管理として取り組むべき課題は何か、また、どのように取り組むべきかについて議論をいたしました。その模様の一部を本レポートにてお伝えいたします。

2010年度の人事/労務管理上の重要課題

今回の研究会開催にあたって、「2010年度に人事が取り組むべき重点課題は何か」についてのアンケートを実施した。アンケートの対象は、(1)これまでに研究会に参加した企業の他に、(2)リシテアユーザー、(3)日立ソリューションズからの情報提供を希望している企業である。うち全22名から回答をいただいた。今回の研究会では、本アンケートの結果をもとにしながら議論を行った。アンケートには2つの設問がある。問1では、回答者に、a~mの項目の中から最大3つまで、今年度の重点課題は何かを選んでいただいた。問2では、問1で選んだ項目に対し、具体的に各社でどのような取組みを考えているのかを自由記述で回答をしていただいた。

【図1】は問1の回答をグラフ化したものである。最も回答が多かった項目が「b.人事・処遇制度の改正」、次に多かった項目が「a.労働時間管理の適正化」である。そして、「m.その他」を除くと「i.メンタルヘルス対策」、「c.人材の定着・維持(雇用延長、再雇用、リテンションなど)」、「e.従業員満足度の向上(モチベーション向上、組織の活性化)」との回答が続く。

今回のアンケート回答で最も多かったのは「b.人事・処遇制度の改正」であるが、アンケートでは具体的な「人事・処遇制度」についても聞いており、それを見ると、ひと口に「人事・処遇制度」と言っても、評価制度、職級制度、人材育成制度、就業制度などさまざまな制度が含まれていることがわかる【図1】。そして制度改正の背景もさまざまである。

アンケートの回答における、重点課題に対する背景や具体的な取組み内容、また、研究会での議論をふりかえると、「i.メンタルヘルス対策」、「c.人材の定着・維持(雇用延長、再雇用、リテンションなど)」、「e.従業員満足度の向上(モチベーション向上、組織の活性化)」といった課題に対する対策の多くが、「b.人事・処遇制度の改正」に帰着することとなり、それが、重点項目の回答数順位として反映されている、という見方ができる。

本研究会では、その仮説に沿って、各社の制度改正における具体的な取組み内容を聞き、その背景となる課題を探り、課題解決のために各企業がどのように取り組もうとしているのかを掘り下げていった。

人事評価/職給制度の変更によって不公平感を解消する

昇進や昇格のしくみに透明性や公平感を欠くと、従業員の満足度、モチベーションの低下を招く。

研究会に参加していたある企業では、現在、基本的には職能等級に基づいた評価・処遇を行っていた。ところが、役職が違っても、同じ職能等級であれば給与がほとんど同じになってしまう現象が発生するため、役職者になるモチベーションが高まらないという問題があった。「支店長と課長で役割は大きく違うのに、職級が同じため、給与が同じになってしまう。こうした制度であるため、管理職になりたがらない人材が増加する傾向にある」(研究会参加企業)。

一方、「管理職になりたくてもなれない」「従業員に対してポストが不足している」ため、従業員のモチベーション低下が大きな問題になっている企業もあった。研究会に参加していたある企業では職能給をベースにしていたが、ある等級から上は役職と職能等級を連動させていた。つまり「マネージャーや部長といったポストに付かなければ、途中からは等級が上がらない制度」(研究会参加企業)になっていた。

ところが、このポストが不足しているため「どんなに優秀であってもマネージャー、部長になれない」ことになってしまう。「ポストがないために、給与が上がらない人材が増えており、若手のモチベーション低下になっている」(研究会参加企業)点が大きな問題となっており、早急に処遇制度を改正する必要があるとのことであった。

スキル認定制度による体系的な人材育成

人材育成のためにもさまざまな制度が導入されている。人材開発の視点から考えると教育研修やキャリア支援など、育成過程に関する制度が重要であるが、人事/労務の視点からは、そもそもどのようなスキルを持った人材を育成していくのか、育成すべきスキルを定義することも重要である。

「時代の変化とともにパフォーマンスと給与が見合わない人も出てきており、今後は、企業が生き残る上で、自社の給与水準が社外の水準とリンクしていなければならない」(研究会参加企業)

今回の研究会では、育成すべきスキルを定義したスキル認定制度を導入している企業があった。いずれもIT企業であり、ITSS(ITスキル標準)を雛形として、業務で必要とされるスキルを定義し、定義されたスキルにもとづいた体系的な人材育成に力を入れていた。

ITSSとは、IT技術者に求められるスキルについて言わば標準的なものさしを提供するものだ。(詳細はこちらを参照 http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/itss1.html)ITSSの活用は、社外にも通じる客観的な基準をもとにスキルを認定することで、技術者のキャリア意識も高めながら体系的な人材育成ができるなどメリットも多い。一方で、「スキル認定は人事評価とは別のものである」というITSS本来の大原則が、現場のマネージャーにとって運用の難しさももたらしている。

スキルのレベルが高い人材が、仕事で高いパフォーマンスを発揮しているとは限らず、また、いくらスキルを上げる努力をしても、仕事の業績に結びついていないと評価されないことになる。

技術者にとってスキルを向上するメリットが釈然としない中で、スキル向上を要望するマネジメントをしなければならない。

これに対し、前述の企業では、「スキルとはビジネスの成果を出すために必要なものであり、スキル認定と業績評価は当然連動する」と、ITSSのマネジメント上の位置づけを明確にしている。そのうえで、業績を上げるためのステップとして、部下のスキルを上げさせることと、スキルを上げた結果を業績に結びつけるためのOJTをマネージャーのミッションとしている。

ITSSに関する議論では、「スキル認定と評価との微妙な関係」がマネジメント上の課題とされることが多かったが(参考 http://www.k-signs.co.jp/workshop/bpm_090617.html)、この例は、マネジメントの現場で「ITSSを明確に評価と結びつけて考える」という面で、ITSSの一歩踏み込んだ運用と言えるだろう。

このようなスキル認定制度は、ITのような技術職には適用が難しいとも言われているが、研究会に参加するIT以外の業種の企業では、人材のコンピテンシー定義をして、「ビジネス貢献するために必要なスキル」を明確にした上で、こうしたスキルを持つ人材を育てていく人材育成制度づくりに力を入れている企業もあった。

就業制度の改正によるワークスタイル変革

研究会では、評価・処遇制度や人材育成制度だけではなく、在宅勤務、フレックスタイム、裁量労働など、新しい勤務制度の導入についても、各社の取り組みを共有した。

ワークスタイルの変革を促進する新しい勤務制度の導入には、企業によって様々なねらいがある。ワークライフバランスの実現や、多様な人材がより働きやすく、活躍しやすい職場環境を作るという「ダイバーシティ」の観点などだ。

研究会に参加するある企業では、長時間労働を要因とするメンタルヘルス不調者の発生が多発しており、フレックスタイム制度の導入で、労働時間の負荷を軽減しようと考えていた。

ただ、柔軟なワークスタイルを促進するこれらの制度には、こうした効果が期待できる一方で、研究会ではフレックスタイム制度を検討している参加者から「フレックス制度では個人の裁量にゆだねる部分も大きく、現場のマネージャーが管理しにくくなるというデメリットもある」(研究会参加企業)点が指摘された。

適切なマネジメントがなされない場合、こうした制度は、ただ単に時間にルーズな働き方にもなりかねない。実際、研究会でも、こうした理由からフレックス制度の廃止を考えている企業もあった。

「生産性向上を目的にフレックス制度を導入したが、運用がルーズになると、逆に労働時間が増えてしまうこともある。フレックス制度を廃止したという企業も増えてきており、廃止した後で、残業時間が減ったという話も聞いたことがある」(研究会参加企業)

在宅勤務制度についても同様のことが言えるだろう。勤務形態の自由度を高めながらも目的とした効果を挙げるためには、仕事の成果を適切に把握する仕組みが必要になる。研究会に参加していたある企業では、在宅勤務制度を導入する前に、在宅勤務者の成果を適確に把握するための成果報告の仕組みづくりに1年をかけた。

在宅勤務者の業務をすべて洗い出し、指標も決め、その指標に基づいて定量的に評価できる仕組みを作り上げたのだという。

また、制度の変更という点では、昨今企業のM&Aが多くなっていることが、人事/労務部門のタスクに大きく影響している。人事制度の異なる企業が一つになり、やがて制度は統一されていくわけだが、統合時に人事制度をすべて統一することは難しく、段階的に統一していくことになる。その間、一時的には現場によって制度が異なるという現象が発生し、それが不公平感を生むことにもなる。

互いの良い部分を取り入れて最良の制度をつくっていく設計力とスピードが、これからの人事/労務には求められる。

2010年以降の課題の変化

今回のアンケートおよび研究会の議論を見る限り、人事/労務にとっての課題は、2010年度においてもこれまでと特別に変わるわけではないようだ。ただ、その背景や内容については、少し変化のようなものが感じられる。

まず、アンケートの回答でも多かった「a.労働時間管理の適正化」であるが、これまでは、就業開始時間や終了時間、または残業時間など、給与の支払い対象となる労働時間が正確に把握されているかが重要な観点であったが、これからの「労働時間管理」とは、生産性を高めることを目的として、そのために、業務に本当に必要な時間を把握することが、重要な観点となると、多くの企業は考えている。

「経営からは労働時間の短縮だけではなく、全社的な効率化を要望されている。労働時間を把握するために、人事部が現場に行って、ストップウオッチで計測してこい、などといった話が出ているくらいだ」(研究会参加企業)

従業員の生産性を高めることは、これまでは人事/労務の役割というよりも、現場のマネージャーの役割と考えられてきたが、生産性を高めるためにマネジメントの領域に踏み込んで、いかにマネージャーを支援できるかが、人事/労務の今後の重要なミッションになっていくだろう。 「労働時間管理の見える化をしっかりと行い、現在、部下がどのような仕事を、どのような進捗で行っているか、マネージャーが適確に把握できる仕組みをまず作ることが重要だ」(研究会参加企業)

また、そのように「人事/労務管理の機能を高めていく」ことと同時に、人事として「経営に対し、人事の価値や存在をアピールしていくことも重要」(研究会参加企業)になってくるだろう。

以前に、シェアードサービス化をテーマに議論をした中でも、人事の戦略的な機能をグループ本社に集約する動きがあった。グループ全体のガバナンスを強化するうえで、人事の機能は、企業価値に直接影響する重要な戦略機能であるという考え方からだ。 (参考 http://www.k-signs.co.jp/workshop/romu1_091022.html

そのように、人事/労務の持つ機能が経営的に重要であることを自ら発信して、人事のプレゼンスを高め、戦略的機能をより強化することを、今後の人事/労務部門は強く意識していくべきかもしれない。

2010年のヒューマンキャピタル研究会では、以上のような観点を意識しながら、人事/労務管理を通じたよりいっそうの企業価値向上を目指し、今後は個々のテーマについてさらに掘り下げて議論を進めていく予定である。

(文責:株式会社ナレッジサイン 森 天都平)

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