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セミナーレポート

人事/労務管理リーダーのための
「ヒューマンキャピタル研究会」第9回

テーマ 「導入済企業と導入検討企業が考えるシェアードサービス提供のあるべき姿」
日付 2009/10/22
参加者 人事/労務業務の本社集中化やグループ内でのシェアードサービス化を考える企業、または、既にシェアードサービスを導入している企業の人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方7名
主催 株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
テーマ
「導入済企業と導入検討企業が考えるシェアードサービス提供のあるべき姿」
日付
2009/10/22
参加者
人事/労務業務の本社集中化やグループ内でのシェアードサービス化を考える企業、または、既にシェアードサービスを導入している企業の人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方7名
主催
株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸

日立ソリューションズでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、人事/労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を、昨年7月より、定期的に開催しております。

第9回となるこのたびの研究会では、前回に引き続き「人事業務のシェアードサービス化」について議論をいたしました。今回は、前回の議論を踏まえながらも、「シェアードする業務をどのような基準で切り分けるのか」「グループ会社を巻き込みシェアードサービスを推進していくために必要なことは何か」といった、導入までの具体的なプロセスについて、シェアードサービス導入済の企業と、導入を検討している企業とでディスカッションをいたしました。その模様の一部を本レポートにてお伝えいたします。

シェアードサービス化の形態

前回第8回のレポートでも触れたが、研究会参加者の話を聞くと、シェアードサービス化には、「オペレーション機能 SSC(シェアードサービスセンター)集約型」と「戦略機能 本社集中型」の2通りがあるようだ。

「オペレーション機能 SSC集約型」とは、人事部門の中で、定型的な業務、事務処理的な業務を指す「オペレーション機能」を、グループ内にあるSSC(シェアードサービスセンター)に集中化することで、業務の効率化・低コスト化を図るものである【図1】。一般的に「シェアードサービス」としてイメージされるのはこのタイプだろう。

これに対し、研究会に参加していた企業の中には、このような「オペレーション機能 SSC集約型」をさらに発展させ、「戦略機能 本社集中型」とでも呼べるタイプのシェアードサービスを導入している企業もあった。これは、人事戦略の立案や、制度の設計といった人事のコアとなる戦略機能を、グループ各社から親会社の人事部に集約することで、グループ各社に対する人事上のガバナンスを強化し、グループとしての戦略強化を図るものである【図2】

「戦略機能 本社集中型」の場合、定型的なオペレーション機能については、コア業務と同様に本社人事部に集約するか、あるいはグループ外部のアウトソーサーを使うことになる。研究会に参加していたある企業では、以前はグループ各社のオペレーション機能を、グループ内にあるSSC会社に集約し、「オペレーション機能 SSC集約型」のシェアードサービス化を推進していた。 ところが、そのような方法では、業務を標準化し、シェアードできる領域に限界があった。そこで、この企業では、一度はグループのSSC会社に集約していた業務を、再度親会社に戻し、グループ各社の人事部をすべて親会社の人事部に集約した。人事機能を親会社に集約することで、より中央集権的な仕組みが可能となり、シェアード可能な業務領域も大きく広げることができたという。今後、この企業では、親会社に集約した人事部の機能のうち、「オペレーション機能」については、グループ外部のアウトソーサーへの委託を検討しており、シェアードサービス化をさらに推進していく方針であるとのことであった。「オペレーション機能 SSC集約型」か、「戦略機能 本社集中型」か。シェアードサービス導入後の最終的なイメージをいずれに置くかによっても、シェアードサービス化を推進していく戦略、課題も異なってくるだろう。

どのようにしてグループ会社を巻き込むか

シェアードサービス化を検討する背景は、グループ全体での利益にある。当然シェアードサービス化の取り組みは、親会社やホールディングカンパニーが強力なリーダーシップのもとトップダウンで進めていくべきものである。

しかし、実際の現場では、必ずしもそうはいかない。

研究会では、グループの方針として「親会社を除くグループ会社全体でのシェアードサービスの導入」が決定しており、そのSSC会社として指名されたある企業が参加していた。親会社より、シェアードサービス化への方針が示され、SSC会社として指名はされたものの、親会社からはシェアード推進に関して、あまり積極的な支援がなく、グループ各社に対して、自らシェアードサービスを売り込まなければならない状態となっていた。「他のグループ会社にしてみれば、人事業務の外部委託に対して、自社の従業員から無責任だと思われるのではないかとの危惧がある上に、グループとしてシェアードサービスを推進していく方針であることが明確にアナウンスされていないため、そのような状況で、単純にグループ会社の1つに業務を委託することに対する危惧もあるようだ」と、研究会でこの企業は述べている。

立ち位置が微妙な中で、シェアードサービスの推進役を言わばボトムアップで担っている。したがって、シェアードサービス化に向けて、親会社に対し、「グループ全社の人事責任者が集まるミーティングで、他のグループ会社に対して呼びかけてもらう」など、積極的な支援が得られるよう、自ら働きかけていくことが、この企業の当面の課題となっている。

親会社だけではない。シェアードサービスを推進していく上で、グループのシステム子会社も強力なパートナーとなりうる。

シェアードサービスを提供するグループ会社と、グループのシステム子会社とで協力し、グループにとって最適なシステムを選定する。その後、シェアードサービス化によって特に大きなメリットが得られるグループ会社や、システム化することが大きなプラスとなるグループ会社に先に声をかけ、数社を集めた上で、他のグループ会社に対しても働きかけていくというステップを踏むことで、シェアードサービス導入を成功させた企業の例も、研究会では報告された。

どのような手順でシェアードサービスを進めていくか

次にシェアードサービスを進めていく具体的な手順についてだが、グループのホールディングカンパニーとして、「オペレーション機能 SSC集約型」のシェアードサービス導入を進めていたある企業では、まずは業務の棚卸しをし、その後で戦略機能とオペレーション機能を分類し、シェアードサービスの対象となる領域を確定するという手順で進めていた。

この企業では、「業務の棚卸し」についても、

  • (1)ホールディングカンパニーが業務文書から人事の業務を500以上に分けた表を作成し、
  • (2)その後、グループ各社にて各業務に必要な時間の記入や、リストに漏れがないかの確認を行う、
という手順を取っていた。

また、ある企業では、「基本的にすべての人事業務をシェアード化する」との前提から、業務をすべて洗い出した後に、その中からシェアードサービス化できる領域を切り分けるというよりも、まず、勤怠管理、給与厚生などの各業務について、どのようにしてシェアードサービス化を進めるかという計画を立て、その中でもとにかくシェアードできる領域から取り組み、そこから少しずつ領域を拡大していくという方法をとっていた。

シェアード化の手順として、業務全体を見直して、シェアード化する領域を決めていく帰納的なアプローチと、最初にシェアードする領域をある程度決めてとりかかる演繹的アプローチの2通りがあるようだ。

シェアードする業務領域をどのようにして切り分けるか

次に「シェアードサービス化する領域をどのようにして切り分け、確定するか」である。これについても課題は各社で様々であったが、大きくわけて2つの視点が指摘された。「戦略的な機能なのか、オペレーション機能なのか」という「機能による切り分けの視点」と、「各地の拠点で行うべき機能なのか、本社で行うべき業務なのか」という「場所による切り分けの視点」である。

まず、前者の「機能による切り分けの視点」についてであるが、「戦略機能」と「オペレーション機能」をより詳細に見ていくと【図3】のように分けられると考えられる。

シェアードサービス化可能な領域として、まずは、(1)そのままでも切り分けが可能なオペレーション機能がある。たとえば「給与計算」に関する業務で言えば、「特定のシートや形式に整備された給与のデータをアップロードする」、「アップロードされたデータをシステムで計算する」といった部分は、どのグループ会社でも共通の業務であるだろう。これについては、業務を実施する場所を集約するだけで、シェアードサービス化することが可能だと言える。

次に(2)標準化することで切り分けが可能なオペレーション機能の領域だ。この領域は、「給与計算」で言えば、たとえば「システムに入力するためにタイムカードをデータ化する業務」や、「勤怠情報の承認や変更業務」といった領域が該当すると思われる。

また、これとは別に、(3)そもそも定型的な業務なのか、戦略的な業務なのか、いずれかを明確にするのが難しい、いわば「グレーゾーン」の領域もある。

(1)の領域だけであれば、シェアードできる領域はあまり大きくない。研究会参加企業のほとんどが、グループとしての集約メリットを出すには、標準化によって、オペレーション機能として共通化できる領域を増やすことが必要である、と考えていた。

しかし、(2)、(3)といった、より上位の領域に踏み込めば踏み込むほど、各社の業務の差異も大きくなり、標準化が困難になるというジレンマがある。どこまでの業務を集約するかによって、後述する「標準化」の範囲も異なってくるのである。

研究会では「各地の拠点で行うべき機能なのか、本社で行うべき業務なのか」という「場所による切り分けの視点」も指摘された。

各拠点で業務を行う場合、それぞれの拠点にその業務の担当者を置くことになるため、業務に無駄が生じる。そこで、業務を集約し、すべて本社で行うことができれば、業務も効率化しコストも削減できることになる。ところが、「社会保険事務所の手続きなどの都合から、業務を完全に集約することができず、拠点から担当者を引き上げることができない」という企業も少なくないようだ。

これに対して、「戦略機能 本社集中型」のシェアードサービスを導入していたある企業では、「拠点やグループ各社に人事担当者は一切置いていない。窓口担当は1名2名いるが、人事担当と呼べる人間はまったくいない」とのことであった。すぐ近くに人事担当者がいないことに対して、拠点、グループ会社の社員から不満の声は出ないのだろうか。

この問に対して、この企業は「そうした不満は出ていない」と答えている。「地方でニーズがあれば、すべて本社から支援をする。拠点担当者を置くのではなく、本社からの支援を強化することで対応している」(研究会参加企業)とのことであった。

シェアードサービス化する業務をどのように標準化するか

先述したように、シェアードサービスの領域を広げていくためには、業務の標準化が必要となる。現在人事の事務業務はシステム化されている領域が多い。業務の標準化は必然的にシステムの統一を伴うものになる。逆に、グループ間でシステムがバラバラであることが標準化を阻害する要因にもなる。

「勤怠管理にせよ、給与にせよ、同じ人間が別のシステムを使って管理するとなると、現実的にはなかなか難しい」(研究会参加者)

ただ、システムの統一には大きなコストがかかる。すぐに新しいシステムを導入することは容易ではない。では、システムの統一ができない限り、シェアードサービス化を進めることはできないのだろうか。

「そのようなことはない」とシェアードサービス導入に成功したある企業は答えている。「その場合、業務の標準化はいくつかのステップを踏んで行うべきだ。ステップごとに標準化の領域を区切り、何段階かで標準化を進めていく。そして最終的にはシステムを統一し、残った業務についても標準化する、という手続きを踏むことになるだろう」。

システムが統一されていなければ、そのシステム上で行う業務の標準化できる範囲も限られてしまう。また、システムが統一されれば、統一されたシステムに合わせていくことで、業務の標準化を進められる可能性もある。業務を標準化する上でシステムを統一しておくメリットは大きい。

「シェアードサービスを進める上では、グループで同じ基幹システムを使うことが重要なポイントだ。グループ企業の規模ごとに特定の基幹システムを指定し、基幹システムをいくつかに絞り込んで、システムの統一を進めている」という企業もあった。

また、業務の標準化のためには、制度の統一が不可欠なこともある。ある企業では、勤怠管理業務のシェアードサービス化を検討していたが、グループ会社ごとに異なる就業規則が導入のネックになっていたという。「就業規則がまったく異なっていれば、勤怠管理業務も揃えることができない」。そこでこの企業では、シェアードサービス導入のタイミングに合わせて、就業規則を改定し、その結果、勤怠管理業務を本社に集約することに成功したという。

標準化には多くの労力が必要だが、プロジェクトに割くことができる人的リソースもコストも限られている。一挙にすべての標準化に取り組むことは難しいだろう。現時点で標準化し、全体最適化できる部分についてだけ、集中的にリソースを投資していく方法がよい、との指摘も研究会ではなされた。

(文責:株式会社ナレッジサイン 森天 都平)

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