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セミナーレポート

「今、すぐそこ、未来、のワークスタイル変革を考えるワークショップ」 第3回
~最新事例からHRテクノロジーの可能性を探る~
AI×人事データで何がわかって、どんなアクションができるのか

日付 2017/06/15
参加者 ワークスタイル変革に携わる企業の人事部門リーダー 7社/7名
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
日付
2017/06/15
参加者
ワークスタイル変革に携わる企業の人事部門リーダー 7社/7名
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸

2016年12月よりスタートした人事イノベーションワークショップ。「今、すぐそこ、未来、のワークスタイル変革を考えるワークショップ」では、ワークスタイル変革の波を受けて、これからの働き方における変化に対して

  • 今:今すぐなすべきことは何か
  • すぐそこ:2~3年先に向けて今から取り組むべきことは何か
  • 未来:10年後を見据えて中長期で考えるべきことは何か

また、それらを実現するために必要なしくみやツールをどう整備するかを、さまざまな企業の人事リーダーの方々と、1年間をかけて議論していきます。

2017年6月15日に開催された第3回では、「HRテクノロジー」をテーマに議論しました。その模様をレポートします。

人事データからメンタルヘルス不調のサインを見つけ出すことができるか

AIやビッグデータ分析など、最新のテクノロジーを活用して、採用、配置、教育、評価などの人事サービスの飛躍的な効率化・高度化を図ろうとするHR テクノロジーの考え方。
実際の人事の現場では、どのようなテクノロジーが、どのような目的で活用され、どのように成果を上げているのでしょうか。
これまでも人事業務では、人事システムなどのテクノロジーが使われてきたわけですが、今改めて「HRテクノロジー」というキーワードが使われるとき、【図1】のように、効率化、自動化、最適化、付加価値化という効果が飛躍的に高められることが、一般的に期待されているようです。
今回のワークショップでは、冒頭に、主催者である日立ソリューションズの取り組み事例をご紹介いただきました。

紹介されたのは、人事データを活用して、メンタルヘルス管理と、組織パフォーマンス診断を行う取り組みです。
IT業界では、従業員がメンタルヘルス不調によって休職する率が比較的高いと言われ、いかにメンタルヘルス休職を減らすかが大きな課題になっています。この場合もっとも重要なのは、メンタルヘルス不調を未然に防止することです。そのためには、メンタルヘルス不調の予兆を見つけ出すことが必要になります。
分析対象の人事データは、「勤務状況」、「個人情報」、「評価情報」、「労働環境」、「アンケート」の5領域、計17項目に上ります。
まず学習データとして、過去にメンタルヘルス休職をした従業員に対する人事データを分析し、メンタルヘルス不調発症の2カ月前の特徴を検出します。その特徴を「予兆」として、同じ予兆が表れている従業員がいる部署にアラートを出し、改善策を打ちます。

また、組織パフォーマンス診断では、「一人あたりの利益率」を、組織パフォーマンスの尺度としてとらえ、それが高い部署をモデルとして、その部署に在籍する従業員の人事データを分析します。この場合は、「勤務状況」、「評価情報」、「労働環境」などに加えて、メールや社内情報共有システムの利用などによって、コミュニケーションの量や質も分析します。
そうすることで、高いパフォーマンスを上げる要因がどこにあるのかを探り、マネジメントの支援とするのです。

人事の定型業務はロボットの仕事になる?

また、RPA(Robotic Process Automation)の取り組みについても紹介されました。RPAとは、人間が行う業務処理の手順を、機械でそのまま再現する仕組みです。
簡単に言うと、人間がエクセルなどを使って処理する一連の定型業務を、画面処理を覚えることで、自動プログラミングのように再現してしまうものです。今のところ、定型的な画面操作に限られていますが、熟練スタッフの業務処理を忠実に再現するロボットを配置するような効果があります。
まざまな分野で導入され始めているRPAですが、日立ソリューションズでは一部業務で試行導入を始めています。

これまでも人事リーダーとのワークショップで議論してきたテーマである、シェアードサービスセンターの業務などは、大部分がRPAによって代行可能になるかも知れません。
ベテランスタッフと同等の業務処理を可能にするだけではなく、次世代型のRPAでは、ベテランスタッフの仕事を再現することによって、人事業務の意味合いも学習することが期待されています。
シェアードサービスセンターの議論では、シェアード化によって、オペレーション業務を経験しなくなることで、業務ノウハウの空洞化が進み、人事業務全体のノウハウの修得が難しくなることが懸念されていましたが、RPAは、そのような課題も解決するかも知れません。

HRテクノロジーがもたらす最適化とは

ワークショップ参加企業が思い描く、将来のHRテクロノジーへの期待についても議論しました。テーマは大きく2つ、最適な人材配置支援と、最適なキャリアデザインの示唆でした。

これまでもタレントマネジメントシステムによるタレントサーチの自動化は、度々議論されてきましたが、どのように人材プロファイルの項目を定義するのか、そして、サーチしたい人材の要件をどのように明文化するのか、が課題として指摘されてきました。
たとえ、タレントマネジメントシステムに人材データを格納できたとしても、人材データに明確なインデックスをつけ、検索可能な検索ワードを選ばなければ、適切なサーチはできません。
しかし、AIなどを使ったサーチでは、定性的な情報でデータベース登録されている人材の中から、曖昧な条件で検索しても、適切な人材をヒットすることができるかも知れません。

また、これまでは、人材を求める側からの視点で、人材配置することを考えていましたが、本当にその人材がその部署で活躍できるのか、上司が、その人材のキャリアを開発するうえでふさわしいのか、前述のような、メンタルヘルス予兆をもたらす要素が労働環境にないのか、といった要素まで分析して、両者にハッピーな人材配置を可能にするかも知れません。

また、キャリアデザインという視点では、多くの人事リーダーが、キャリアデザインのコンシェルジェ的な機能を期待していました。
人材が多様化していく中で、企業が提供すべきキャリアモデルも多様化していきます。選択肢が増えることは、人材にとって可能性が広がることである一方、選択の難易度が増し、企業側が一人ひとりに最適なキャリアモデルを提示することも難しくなります。
個別の人材のデータから最適なキャリアパスを導き出し、職場環境データなどから、個人のキャリアパスと会社の接点を見出す。このようなソリューションが将来の人事サービスとしては必要になってくるかも知れません。

これらの議論が活発になる背景としては、人材の多様化によって、職務や評価、キャリア、働き方そのものへのバリエーションが広がることで、「最適化」ということがよりいっそう難しくなってきていることがあると思われます。
テクノロジーがどこまで人間の判断を支援するのか、あるいは、人間の判断の領域にテクノロジーがどこまで踏み込んでいくのか。人事業務ということを題材にすることで、人間とテクノロジーの将来の役割について考える良い機会になります。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)

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