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セミナーレポート

~転換期を迎えた人事シェアードサービス戦略~
「人事シェアードサービスをアウトソースから戦略的な機能へ進化させる方法」

日付 2015/11/18
参加者 人事シェアードサービスセンターを統括される経営陣、マネジメントの方々 9社/10名
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
日付
2015/11/18
参加者
人事シェアードサービスセンターを統括される経営陣、マネジメントの方々 9社/10名
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸

今回のワークショップでは、これからの人事シェアードサービスセンター運営の方向性について議論すべく、実際にシェアードサービスセンターを運営する企業を中心にお集まりいただいた。
今回参加された企業の多くは、設立から10年以上経過しており、受託しているグループ会社数は、数十から、多いところでは100を超える規模まであった。

課題は「効果の最大化」と「戦略機能への進化」

90年代以降、人事業務含めスタッフ業務のシェアード化が進み、グループ内にシェアードサービス会社を作るケースも増えてきた。シェアードサービスセンターは主に【図1】のような目的で導入されるが、設立から5年以上が経過し、ある程度シェアードサービス化が定着してきた頃に以下のような課題が顕在化してくる。

ワークショップでは、課題を「効果の最大化」と「戦略機能への進化」という側面で分類して議論した。
まずは、「効果の最大化」という点であるが、今回のワークショップ参加企業に、「現在のシェアードサービスセンター運営における課題」をお聞きしたアンケートの結果が【図2】の通りだ。

シェアードサービス導入の目的のもっとも大きなものは、業務の集約化・効率化によるコスト削減であるが、これはグループの人事業務をどれだけ集約できるか、また、業務をどれだけ標準化できるかにかかってくる。
アンケート結果で見ると、まだまだ集約化の余地は残っており、個社別の対応や属人的な業務も多く、標準化についても進んでいないように見受けられる。

一定のレベルで停滞する集約化と標準化

参加者の声を聞くと、シェアードサービス導入時こそ本社が中心になってグループを挙げた業務の集約化に力を入れるが、スタート時に漏れたグループ会社が順次シェアード化に切り替えるには、シェアードサービス会社側からの営業活動が必要で、時間を要してしまうようだ。
また、グループ会社間で業種・業態が異なると、すべての業務を集約化するわけにはいかず、一部業務を切り取った形での集約化になってしまう。そうなると、集約化のスケールメリットも損なわれてしまう。

また、グループ会社ごとに制度が異なるため、個社別の対応も多い。そのため業務も属人的になりやすく、当初目論んだ 業務プロセスの標準化はなかなか進まない。

ワークショップ参加企業の中には、グループ全体で人事制度を統一し、人事に関する業務もできるだけ標準化しようとしている企業もあったが、これには強力なトップダウンマネジメントが必要だ。
また、標準システムに乗らない業務に対して個別対応はせず、シェアードサービスの対象からはずす、というアプローチを取る企業もあった。

90年代に加速化した人事業務のシェアードサービス化には、グループ各社に散らばる業務を1ヶ所に集めさえすれば効率化するであろうという発想が少なくなかったように思われる。しかし、それでは、集約化と標準化が一定レベルで停滞してしまい、シェアードサービス化による効率化のメリットをあまり享受できない。グループ全体としての戦略的な集約化・標準化の強いガバナンスが求められる

本社・シェアードサービスセンターともに抱える人材の課題

シェアード化が進むにつれて、実務ノウハウはシェアードサービスに移行していき、本社人事部には実務のわかる人材が少なくなっていく。
これは、業務処理において本社人事部が的確な判断をできなくなってくるという側面だけでなく、人事のスペシャリト育成の側面でも課題となっている。
人事のスペシャリトを育成するためには、戦略業務だけでなく、人事の実務知識が必要だ。
いざ人事制度を新しく設計しようというときに、この実務経験の不足が障害となるケースが出てくる。そのため、入社してから一定期間はシェアードサービスセンターに出向させるケースも多い。

一方で、シェアードサービスセンター側では、【図2】の回答以外の課題として、人材の高齢化、マネジメントスキル不足、モチベーションの低下が挙がっている。
シェアードサービスセンターの立ち上げに際して、本社人事部から転籍してきた人材が多い一方、生え抜きの若手人材は少なく、シェアードサービス化の歴史が長くなるにつれ、人材が高齢化していく。前述のように、本社人事部から教育目的で若手人材を出向させるケースは多いが、いずれ本社に戻っていくため、シェアードサービスセンター側で次世代の幹部候補が育たないのだ。また、マネジメントスキル不足、モチベーションの低下も問題となっている。オペレーション業務を中心としているため、キャリアパスが描きづらくなっているのだ。
次世代の人材を育成し、シェアードサービス会社が継続的に発展していくためには、ただ効率性を追求するオペレーション専門ビジネスではなく、人材サービス事業者としての付加価値を高めていかなければならない。

業務改革コンサルタントへの機能進化

ワークショップ参加者に、シェアードサービスセンターをより戦略的な機能へ進化させるために、今後どのような領域に力を入れていくかを聞いたアンケート結果が【図3】である。

アンケートでもっと多い回答が、「業務プロセス改革の積極的な提案」である。現在も、グループ会社から業務を受託する際には、ただ単純に注文に応じるだけでなく、なんらかの業務プロセス改善の提案を盛り込むことが多い。
ただ、それはともすると、サービスレベルをすり合わせるための条件交渉となってしまう。
そうではなく、本当に顧客にとって必要な業務プロセスとは何かを、業務の委託に伴って明確にし、業務改革や制度改革の必要があるものは、積極的に改革案を提示していく。そのようなスタンスに変革することをワークショップ参加企業は皆考えている。
ワークショップで紹介されたソフトバンク様のケースでは、新しい勤怠管理システムの導入に伴って、システム企画とプロジェクトマネジメントを、シェアードサービス会社であるSBアットワークが担っていた。
エンドユーザーとITベンダーの橋渡しをしながら、最適なシステム要件を引き出し、開発から導入までのプロジェクト全体をリードする。言わば、業務特化型のITコンサルタントのような役割だ。
相当なプロジェクトマネジメント能力が必要とされるが、このような機能を担うことができれば、確実に顧客の業務改革に踏み込んだ付加価値を提供できる。
※詳しくはこちらからもご覧いただけます。

アウトソーサーから人材ソリューション事業者へと進化していく

アンケートの結果で次に多いのが、「現状の受託業務以外の幅広い人事サービス領域への拡大」であった。これは、人事業務としてのアウトソーシングの幅を拡大するという意味だけではなく、「人材」をテーマにした新しいビジネスに拡大するというものも含まれる。
前述のSBアットワーク社では、他社と共同でストレスチェックツールを開発し、これをグループ企業に対して福利厚生サービスとして販売するビジネスをスタートさせた。今後は、グループ企業だけでなく、グループ外の企業にも外販していく考えだ。
また、他の企業では、グループのさまざまな業種・業態の人事業務を取り扱うことで、シェアードサービスセンターのスタッフが幅広い分野の人事業務を理解するスキルが育成されたことを受けて、このノウハウを人事部門の実務者トレーニングとしてサービス化することも考えている。
このように、人材をテーマに新たなビジネスモデルを展開していくこともシェアードサービスセンターの新しい進化の方向性として検討されている。

進化しようとする本社人事部をパートナーとして支援できるか

シェアードサービスセンターだけでなく、企業の人事部そのものに進化が求められている。
今回のワークショップの共催者である日立グループでは、人事部門の役割・組織が【図4】のように変化すると考えている。

これまでの人事部門は、個別タスクごとにチームが分かれていたが、今後は人事制度の企画・設計と運用・オペレーションに分かれ、さらに事業部門との窓口となり、事業別のニーズに対してソリューションを提供するビジネスパートナー部門に分かれるという考え方だ。
特にビジネスパートナー部門の役割が重要だ。従来の人事サービスは、インフラとしての共通制度を提供することが中心であったが、これからは事業のニーズに合ったソリューションを提供していくことが中心になる。
まさに人事部自身の進化である。

これに伴い、制度運用部門(OPE)としてのシェアードサービスセンターの役割はより大きくなっていくだろう。さらに、本社人事部がビジネスパートナーの機能を強化しようとするのに伴い、業務受託を通して各グループ会社との接点が強いシェアードサービスセンターが、本社人事部をどこまで支援できるかが、シェアードサービスセンターの進化にとって重要となるだろう。
人材が高齢化し、本社と比べても待遇面で不利な状況で、このような組織の役割変化に挑んでいかなくてはならない。シェアードサービス会社自身の経営努力と、グループ経営としての戦略的投資の両方が不可欠である。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)

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