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健康管理・健康経営

健康経営の効果とは?概要・注目の背景と事例も解説

従業員の健康を害するような長時間労働が問題視されている今、企業が積極的に従業員の健康管理に関わる「健康経営」という経営戦略の重要性・関心の高まりが注目されてきています。企業における健康経営とは、一体どのような経営のことを表し、実際に取り組んでいる企業はどのような効果を生んでいるのでしょうか。本稿では健康経営について、その効果や注目される背景・導入した企業の事例について解説します。

健康経営の効果は?概要と注目の背景から解説

健康経営を実現することで、従業員の健康維持・向上はもちろん、生産性向上・業績向上も期待されています。ここでは、まず健康経営を定義し、健康経営が注目される背景を解説します。

  • 企業における健康経営とは
  • 健康経営が推進される社会背景

1つずつ見ていきましょう。

企業における健康経営とは

最初に、企業における健康経営について解説します。
健康経営とは、企業が戦略的かつ積極的に、従業員個人の心身の健康管理に配慮し、また健康投資を促す仕組みを構築・実施することです。健康経営を導入することで、企業の収益性・企業イメージの向上、組織として健全な経営を維持できるという効果が期待できます。企業が自社の従業員について、自社を超えて社会においても重要・不可欠な資本であるということを、理解していることが前提になります。

健康経営の取り組み例は、働きやすい環境の整備、心の健康などの健康情報の提供、継続的な健康管理を行うことなどで、従業員1人ひとりの健康づくりを推進します。

例えば以下のような具体的な取り組みが挙げられます。

  • 歩数・体重・体脂肪率・血圧を定期的に記録することで健康管理の習慣を身につける
  • ストレスチェックや専門医・専門スタッフによるカウンセリングの実施でメンタルヘルスの向上やうつ病予防をする
  • 朝礼時のストレッチで運動不足を予防する

健康経営の取り組みにより、従業員の生産性・創造性の向上のほか、健康寿命の延伸・医療費の抑制効果が期待できます。

健康経営が推進される社会背景

次に、健康経営が推進される社会背景を解説します。
健康経営とは、もともとは1980年代にアメリカの経営心理学者であるロバート・ローゼンにより提唱された概念です。「健康な従業員こそが、収益性の高い企業をつくる」= “ヘルシーカンパニー思想”が考え方の元となっています。そして日本では、この概念をさらに1歩深めることで、「企業経営の安定かつ向上」と、「従業員の健康管理」の2つを両立させるという意図から、“健康経営”という言葉が生まれたといわれています。

現在、政府は「健康寿命の延伸」として、国民が健康上の問題なく日常生活を送ることができる状態にある年齢の延伸を掲げています。これに伴い、関係省庁もさまざまな施策をはじめました。例えば、経済産業省では東京証券取引所とタッグを組み、“健康経営”を積極的に取り入れている企業を「健康経営銘柄」として発表しています。「健康経営銘柄」では、「健康経営に取り組むための制度があり、施策が実行されているか」「健康経営が経営理念・方針に位置づけられているか」などのカテゴリーにおいて評価・選定を行なっています。2015年から開始し、2021年の時点で、29業種48社を選定しています。

「健康経営」を実践している企業は、国をはじめ、株式市場からも高い評価を得ているといえます。

健康経営の導入によって期待される2つの効果

人事戦略に健康経営を導入することによって期待される効果は以下の3つです。

  • 健康経営優良法人認定による企業イメージの向上
  • 従業員のモチベーション向上や生産性・収益性の向上
  • 従業員の健康を維持し、病気などによる人材不足を予防する

1つずつ見ていきましょう。

健康経営優良法人認定による企業イメージの向上

1つ目は、健康経営優良法人認定による企業イメージの向上についてです。
健康経営優良法人認定を受ければ、制度を活用した人材募集も可能になります。

健康経営優良法人認定とは、経済産業省が打ち出す政策で、地域の健康課題への取り組み・日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業・中小企業などの法人を顕彰する制度で、基準は法人の規模によって変わります。健康経営に取り組む法人を見える化することで、社会的評価の向上を得ることを目的としており、企業イメージの向上も期待されています。

従業員のモチベーション向上や生産性・収益性の向上

2つ目は、従業員のモチベーション向上や生産性・収益性の向上についてです。
健康経営優良法人の認定を受けることで、企業は従業員の健康に対しての投資による心身の健康の維持向上が可能となり、従業員のモチベーション向上・生産性向上へとつながり、さらには収益性の向上も期待できます。

従業員が心身ともに健康的な状態で働くことができる組織を作っていくことは、健全な経営を続けていくことにつながっていきます。

従業員の健康を維持し、病気などによる人材不足を予防する

3つ目は、従業員の健康を維持し、病気などによる人材不足を予防することです。

従業員が自分の健康を維持・増進させるためには、定期的に体を動かしたり、規則正しい生活や食事に気を配ったり、ときにはストレス解消したりすることも必要です。従業員にとって、労働時間=職場で過ごす時間は1日のなかでも多くを占めており、企業が従業員の健康管理をサポートすることで、より効率よく、かつ効果的に健康づくりに取り組むことができます。また、従業員1人ひとりが日々の体調管理を行うことで、生活習慣病や心疾患、脳血管疾患などの予防にも大きな効果が期待できます。特にこれらの病気は、企業を支えている働き盛りの世代の従業員が発症することも多く、療養や入院などで人材不足に悩まされるケースも少なくありません。

健康経営に注力することで、病気による欠員や人員不足を事前に防ぐことができ、不測の事態を起こさないことにつながることから、企業として大きなメリットといえます。

健康経営の取り組み事例と効果

ここでは、人事戦略に健康経営を導入した企業の事例を3つ紹介します。
1つずつ見ていきましょう。

事例1:自動車販売会社

人事戦略に健康経営を導入した企業の1つ目の事例は、自動車販売会社です。

取り組みの背景には、職場づくり・人財づくりに取り組む中で、従業員の満足度を高めるためのトップ主導の施策を検討していたことが挙げられます。給料が良いこと・休みがとりやすいことももちろん大切ですが、従業員がいつも健康であることこそが重要だと考え、健康経営に取り組み始めました。具体的な取り組みとしては以下の2つがあります。

運動機会の増進

従業員に電子万歩計を携帯してもらい、歩いた歩数を集計し、個人別・部署別実績を毎月、ニュース形式で公表しています。時々、ウォーキングコンテストも実施し、楽しみながら継続して運動する環境づくりを工夫しています。

食生活の改善

本社社員食堂を、みんなが笑顔でゆっくり食事できるようにリニューアルしました。カロリー別におかずをチョイスできる、ヘルシー仕出し弁当を提供しています。

取り組みの結果、地元新聞で活動が取り上げられたり、実際にどのように活動しているのかという問い合わせが増えたりして、注目度が上がっていることが実感できるようになったり、人材採用の面接に健康経営に興味がある優秀な人材が集まってきたことが、効果として挙げられています。また、店舗内に健康コーナーを設置し、従業員が普段計測している体組成計をお客様に使っていただけるようにしたことで、従業員とお客様が健康についての話題でコミュニケーションが取れるようになったことも大きなメリットといえます。

事例2:社会福祉施設

人事戦略に健康経営を導入した2つ目の事例は、社会福祉施設です。

取り組みの背景には、法人として従業員は宝であるという思いを前提に、「うちでもできそうだ」、「やってみよう」という話から健康宣言を打ち出したことが挙げられます。そして従業員が50名を超えたことを区切りに「健康経営の活動を地域に発信していこう。これも地域貢献の1つだ」と考え健康経営に本格的に着手しました。

具体的な取り組みとしては、以下の3つがあります。

運動機会の増進

平日は昼食後に、施設の利用者と一緒に20分間の歩行運動を行っています。天気の良い日はグラウンドで、天気の悪い日でも施設内で歩いています。このような軽い運動は、20年以上前から行われており今に至るまで継続されています。

受動喫煙対策に関する取り組み

敷地内全面禁煙とすることで、自然と吸わない習慣になる従業員が増加しました。

健康経営の取り組み事例の発信など

玄関前に宣言書を掲示したり、施設の入口から良く見えるところに「健康経営優良法人」認定の看板などを掲げたりして、地域住民などへも取り組みを発信しています。

取り組みの結果、施設の利用者の方の中にも数年前までは喫煙者がいましたが、今はいなくなっています。そのため、敷地内に灰皿も必要なくなり、今では、利用希望者にも全面禁煙をお願いできるようになりました。また、地域交流行事などで施設を開放し、利用者はもちろん、地域の方・家族・職員間の交流を深めることを目的として交流行事には好評が得られており、地域住民からの信頼が集まると同時に、施設を知ってもらう機会にもなっています。

事例3:建材事業会社

人事戦略に健康経営を導入した企業の3つ目の事例は、建材事業会社です。

取り組みの背景には、ダイバーシティ経営を行動指針の一つに掲げていることが挙げられます。従業員1人ひとりの健康の保持増進に努め、いきいきと働くことができる職場環境づくりを実現することで、仕事への意欲が高まり、生産性の向上や仕事の効率化にもつながると考えています。

具体的な取り組みとしては、以下の2つがあります。

従業員の健康保持・増進への取り組み

新入社員研修での健康管理セルフケア研修をはじめ、イントラサイト上で、健康に関するイベントの案内やコラムを発信しています。取り組みの結果、2013年から連続で健康診断受診率100%を達成しています。

メンタルヘルスケアの実践

厚生労働省が策定した「労働者の心の健康保持増進のための指針」に基づき、メンタルヘルスについて「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフなどによるケア」「事業外資源によるケア」の4つのケアを実践しています。臨床心理士の資格を有する従業員が、社外提携機関と連携しながら、メンタル不調者へのフォローや復職支援に取り組んでいます。

これら2つの取り組みの結果として、従業員の健康保持・増進への取り組みによって、2013年から連続で健康診断受診率100%を達成しています。また、メンタルヘルスケアの実践によって、従業員が不調になった場合にフォローを行うとともに、メンタルヘルスの相談内容から傾向を分析し、その後の研修などに生かすようになりました。

健康経営の効果を高める導入のポイント

健康経営の効果を高める導入のポイントとして、まず経営層から取り組みへの本気度を全従業員に伝える、意思表明を行うことが重要です。例えば健康経営優良法人認定制度では、認定要件の冒頭に、「経営者による健康経営宣言の発信」、「経営者自身の健診受診」が掲げられています。この点から、まず経営者は従業員の健康が経営資源の一要素であるという認識を持つ必要がある、といってもよいでしょう。

そのうえで経営層をトップにしたプロジェクトチームの編成を行い、継続して情報発信を行うことが求められています。プロジェクトには効果検証を行いやすい部門からメンバーを招集することがおすすめです。例えば、人事を巻き込むことで健康を害したことが原因となる離職などの数値を追跡することが可能となり、取り組み前後の変化をみていくことができます。そして結果について、広報から全社への発信を行い継続した取り組みをアピールしていくことができます。

新入社員の採用時に健康経営の導入をアピールしたものの、実際に社員として入社したときに、取り組みを推進している印象がない、というようなギャップが生まれないように継続した取り組みにしていきましょう。

まとめ

本稿では、健康経営とは何か、社会背景、導入効果、導入した企業の事例について解説しました。健康経営を導入するには、トップの本気度を全社に示し、継続した発信を行なっていくことが重要です。健康経営に取り組む企業の事例を参考にしながら、自社に適した取り組みを実施していくことがおすすめです。従業員の健康は今後の企業経営において重要な要素の1つとしてとらえ、従業員が生きいきと仕事をすることにより、生産性と収益の向上を目指していきましょう。

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